果実の規格外品や、芯など未活用部分の使用を“もったいないブランド”として前面に打ち出す加工食品が続々登場している。エシカル(倫理的)な食品として価値を高め、消費者が手に取りやすい表示や加工の仕方を工夫する。フードロス削減と果実生産者の所得向上の好循環が期待される。
規格外のイチゴを活用
リンゴの芯を使ったチップス(オイシックス・ラ・大地提供)
KOMPEITO(東京都品川区)運営の社食サービス「オフィスで野菜」はJAあいち経済連と連携し、規格外のイチゴを使ったアイス「サステナブルアイス いちご」を開発。冷凍プラン利用客を対象に4月から販売を始めた。
同商品では、傷や過熟で規格外になった愛知県産イチゴの使用をパッケージで説明し、アピールする。規格外品の使用を前向きに捉える消費者の増加を受け、「エシカル商品に興味がある人が手に取りやすいように工夫した」(同社)という。同社は今後も規格外イチゴを活用した商品の開発を予定しており「取り組みを広げていきたい」と話す。
リンゴの芯に注目
規格外のイチゴを使ったアイス(KOMPEITO提供)
食品の定額購入サービスを提供するオイシックス・ラ・大地(東京都品川区)は、国産リンゴの芯を使ったフルーツチップス「おいしくアップサイクル りんごの芯チップス」の販売を4月から始めた。
普段は食べない素材という意外性と、おいしさで、楽しいエシカル消費を提案する。同社は消費者に、普段は捨てている部分が実は食べられるという「新発見を通して普段の調理にも生かしてほしい」と話す。5月には、規格外の国産キウイフルーツを皮ごと使ったチップスの販売を始めた。
従来、果実の規格外品はジュース原料として、芯や皮は飼料などとして利用されてきた。農水省はエシカル消費への関心が高まる中で規格外品などの「利用方法の選択肢が増え、高単価で取引されることは産地にとってもプラスになる」(園芸作物課)と受け止める。産地の利益につなげるためにも「生産者に還元される、適正な取引が求められる」(同)と話す。
消費者庁の調査によると、直近の2019年度はエシカル消費について「興味がある」人が6割に及ぶ。エシカル商品・サービスの「購入意向あり」とした割合は、16年度調査比で19・4ポイント上昇した。エシカル消費の機運が高まる中で、果実の規格外品の使用などを付加価値として積極的にアピールする加工食品が増えている。
(永井陵)