同牧場のフリーバーンの牛舎では、ジャズが流れる。「牛も人もリラックスできるように」(須藤晃代表)との考えからだ。
経産牛は、受胎の有無や健康状態に合わせて五つの部屋に分けて管理。発情中の牛や、けがなど異常のある牛は個室にし、牛同士の接触による事故リスクなどを軽減する。牛の健康状態などを記録できるシステム「ファームノート」で情報共有することで、誰かが休んでも仕事を回せる体制にしている。
牛の腸内環境を整えるため、乳酸菌を牛の餌に混ぜ込むことで、ふん尿の臭いを軽減する。その戻し堆肥を牛床に使い、臭いによる牛や人へのストレスも減らす。夏場は40度近くに達する日もあることから、対策として牛の水浴び用のシャワーを設置。牛が自由に移動できる牛舎間のスペースの上部にチューブ状のシャワーを設置し、夏場の日中、かけ流しの状態にする。井戸水を使い、経費を抑える。
こうした工夫は、「冷たいシャワーと大型の扇風機のおかげで心地よく過ごせました」「爪の長さが気になった頃に定期的に手入れしてくれてうれしいです」など、牛の“口コミ”としてホームぺージに掲載。従業員も、ホテルマンに扮(ふん)した服装で牧場での仕事を紹介する。ホームぺージで発信することで、アニマルウェルフェア(快適性に配慮した家畜の飼養管理=AW)や、職場の雰囲気の対外的なアピールにもつなげている。
十数年前から地元の耕種農家と連携し粗飼料を生産。麦、青刈りトウモロコシ、稲発酵粗飼料(WCS)を地場産で確保し、2023年で粗飼料の地場産率は8割に上る。
須藤代表は「AWや地域内循環に取り組むことで、次の世代もやりたいと思える酪農の形にしていきたい」と意欲を示す。
経営概況
▽労働力=須藤代表、妻、従業員3人、パート3人、外国人材2人
▽経営規模=経産牛114頭、育成牛70頭(預託)
▽売上高=1億7000万円