確認シートで実施意思報告
今回導入されたクロスコンプライアンスは、適期に合わせた施肥や防除、悪臭の防止など、従来から農家が実践してきた環境負荷低減の最低限の取り組みを、同省の各種補助事業の要件にするもの。24~26年度を試行期間と位置付け、27年度からの本格実施を目指す。
4月から始まったのが、補助事業を申請する際の「チェックシート」の提出だ。シートでは①適正な施肥②適正な防除③エネルギーの節減――などの7項目について、「肥料の使用状況などの記録・保存に努める」「省エネを意識」といった取り組みの実施意思を記入する。
畜産経営体向けも基本の7項目は共通で、アニマルウェルフェア(快適性に配慮した家畜の飼養管理=AW)の認識など、畜産分野独自の事項が盛り込まれている。
同省がホームぺージで公開するシートの“解説書”では、どんなことに取り組めばチェックを付けられるのかなど判断基準が示されており、参考にすることができる。例えば「肥料の適正な保管」の判断基準は①直射日光や雨の当たらない場所に保管②地面に直置きしない――といった内容で、一つでも実践していればチェックを付けられる。
25年度以降は、チェックを入れた項目で、事後報告の提出も求める方針。同省は「チェック項目は生産現場では当たり前の取り組みがほとんど。余分な肥料やエネルギーを減らすことは、コスト削減にもつながる」(みどりの食料システム戦略グループ)とする。
農家負担減へ企業にも動き
農薬メーカーなど関連企業では、クロスコンプライアンスへの対応を見据えた動きが広がっている。
バイエルクロップサイエンス(東京都千代田区)は、圃場(ほじょう)ごとの雑草の発生状況などに応じ、散布する薬剤の適切な量や種類、タイミングを組み合わせる「水田雑草テーラーメイド防除」を提案。3月には、圃場ごとの処方を出す無料のウェブアプリ「my防除」の一般向け提供も始めた。同社は「適正な防除や生物多様性への配慮など、クロスコンプライアンスで求められる取り組みにも合致する」とみる。
同農場の金井大将さん(32)は「世の中の流れを見ても、環境配慮は必要な取り組みだが、新たなことを求められるとなるとハードルになる」と指摘。年々、担い手農家への集約で面積が拡大傾向にある中、「テーラーメイド防除のように、生産性の向上や作業の効率化と両立しつつ、環境負荷も減らせれば、負担感は少ない」と話す。