各地で相次ぐブドウ「シャインマスカット」の開花異常(未開花症)。症状が出た後に花冠を手で落としたり、花冠が付いたままジベレリン処理をしたりしても、健全な房になる可能性は低いと研究者が指摘している。花冠が外れない時点で、既に花冠の内部で異常が起きてしまっているためだという。
専門家「内部の組織が肥大」
こう指摘するのは、長野県農業大学校の川合康充教授だ。シャインの開花異常は、5、6月の開花時期になっても、雌しべと雄しべを覆うキャップ状の「花冠」が外れないことを指す。川合教授は同県農業技術課で、2018~20年にシャインの開花異常を研究。症状が出た満開期の花穂を複数採取し、花冠の内部を調査した。
その結果、症状が出た花穂では、雄しべの葯(やく)を支える「花糸」が肥大化していることを確認した。果実となる子房を覆ったり、くっついたりして果粒の生育を妨げ、花冠が外れにくくなるという。
花糸は通常は棒状で、肥大化の原因は特定できていない。川合教授によると、花糸が①子房全体を覆う②子房を部分的に覆う③子房に付着――する場合があり、それぞれ着果不良、変形果、筋状のさびの原因になる。同県で数十カ所の発生園を調べたところ、樹勢が強い木で発生が多い傾向がみられたという。
「花冠内部の異常が原因なので、症状が出てしまうと対処は難しい」と川合教授。前年に症状が出た園では翌年も発生する傾向があるとして、症状が出にくいとされる上部の軸(支梗)や花穂の中間部を残すよう助言する。
福島、群馬からも
シャインの開花異常が福島県や群馬県でも発生していたことが、本紙「農家の特報班」に読者から寄せられた情報で分かった。読者からの新たな発生報告は滋賀県に続いて3県目。
本紙が主産23道府県の農業試験場などに行った調査では、15県で過去に開花異常が発生していた。福島県はシャインの栽培面積が全国8位だが、同調査では発生が確認されていなかった。群馬県は同調査の対象外だった。
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