先行ハウスで
「これが、症状が出た房です」。同県甲州市で観光農園を営む坂田武史さん(46)がひと房切り取り、記者に手渡した。5月中旬、ハウス内のシャインは露地よりも約1カ月生育が早く、既に果粒は大豆ぐらいの大きさ。だが、先端部の花が実にならず、小さなままの房がいくつかあった。
よく見ると、実にならなかった先端部の花に、茶色いごみのようなものが付いている。本来は自然に外れるキャップ状の「花冠」が変色したものだ。
坂田さんの園では2019年に症状が出始めた。以降は毎年、約20アールのハウスで数本程度、計約1ヘクタールの露地では一部の園で広く症状が出ている。房の形を作る花穂整形の工夫で収量・品質への影響を抑えるが、ただでさえ忙しい開花期に「時間と手間が余分にかかる」(坂田さん)。
花穂整形は通常、房の形を整えやすい花穂の先端部を残し、不要な花や軸(支梗)を取り除く。だが、開花異常は先端部で発生しやすい。このため坂田さんは先端部と上部の支梗を両方残し、着粒後にどちらを残すか判断する。同市などで行われている対処法だ。
しかし、管理する房の数が増える上に、先端部と支梗では満開期が異なり、種なしにするための1回目のジベレリン処理を別の日に行う必要がある。人手不足でやむなく通常通りの花穂整形をした年もあり、大房に仕立てるのも難しいという。
「普通に栽培できる環境に戻ってほしい」と坂田さん。露地での発生が少ないことを願い、作業を続ける。
露地でも確認
他の農家からも「農家の特報班」に連絡が相次いだ。
山梨県の別の農家からは、露地栽培で開花異常が発生したと報告があった。1本の木にとどまるが、30~40房に症状が出ており、半分は収穫できない見込みだという。「他の木で出ないと良いのだが……」と心配する。
「まずは対処法を広く発信してほしい」と求めるのは、群馬県高崎市で10アール栽培する50代の農家。22年に初発生し、今年も不安を感じている。県内では発生例が少なく情報が乏しいため、周辺農家と他県の情報を集めて対処しているという。
「シャインマスカット」開花異常の情報をはじめ、「農家の特報班」(略称のうとく)に取材してほしいことを、LINEでお知らせください。友だち登録はこちらから。
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