本紙には暗渠(あんきょ)や明渠がよく登場するが、日常的に使われることが少ない単語だ。
しかし、どちらも農業分野だけの用語ではない。暗渠は、地下に作ったり、上部を覆ったりして、外から見えないようにした水路のことを指す。地下を流れる下水道や、ふたをした排水溝などは暗渠だ。逆に明渠は地上に設け、上部が開いたままの水路で、開渠とも呼ぶ。
農業では、暗渠も明渠も、農地の水を排出することを狙いとしている。暗渠は地中に浸透した水を、明渠は雨水などが地中に浸透する前に農地の外に出すのが役割。どちらも、転作田の水はけを良くする目的で設置することが多い。水田は水持ちが良いが、本来は畑で作り、多湿に弱い麦や大豆には水持ちの良さが課題となる。畑でも、低地で水がたまりやすい場合などに設ける。
暗渠は、地下70センチ程度、およそ10メートル間隔で排水管を埋めて排水路につないだ「本暗渠」と、本暗渠に水を集めやすくする「補助暗渠」に分かれる。本暗渠の排水管は、直径5~10センチ程度、ポリエチレン製などで、水が入り込む小さな穴が開いている。施工は土木業者に依頼する場合が多いが、トラクターなどを使って自力で行う農家もいる。
補助暗渠は排水管を使わず、本暗渠の上部に、水の通り道となる穴を開けたもの。銃弾のような形の器具を農機で引いて開ける「弾丸暗渠」、爪状の器具「サブソイラー」を引き、土にひびを入れる技術などがある。
農地の明渠は、地表に掘った排水溝のことだ。農機やくわなどを使って掘る。畦畔(けいはん)に沿って農地を囲むように掘る「額縁明渠」が代表例だ。深さ20~30センチ程度掘り、排水路につなげて水を出す。
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