患者数増加の背景には、地球温暖化でマダニを運ぶ鹿やイノシシの分布拡大が指摘されており、野生動物が活発化するこれからの季節は一層の警戒が必要だ。
集計によると、年間の患者数が最悪だった2021年26週より4人多い。感染症ごとの患者数の傾向はほぼ同じ。日本紅斑熱が144人、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)83人と双方で全体の9割を占める一方、ライム病6人、回帰熱10人となっている。
都道府県別の患者数は、日本紅斑熱の最多が広島の30人で、三重17人、熊本10人、和歌山9人と続く。SFTSは山口・宮崎が各10人、長崎9人、高知・大分各7人などいずれも西日本に集中。一方、ライム病と回帰熱は北海道が最も多く、それぞれ3人、10人と全国の大半を占める。
感染研が6種の記録を始めた13年以降、患者数は増加傾向にある。過去最多の21年は633人、22年617人で、10年で倍増。日本紅斑熱とSFTSの患者の増加は顕著で、患者数全体を押し上げている。ライム病と回帰熱は年間10~20人台で推移。ダニ媒介脳炎は18年以降、野兎(やと)病は15年以降、患者は確認されていない。
一方、近年はマダニ媒介の新しい感染症も出現。20年に見つかった「エゾウイルス」は北海道で7人が感染し、22年は「オズウイルス」に感染した茨城の70代女性が死亡した。患者が確認されていないマダニ感染症が10種以上ある。
患者数増加について、環境省鳥獣保護管理室は「マダニを運ぶ鹿やイノシシの生息域が、地球温暖化に伴う積雪の減少で広がっているためではないか」と指摘。その上で「耕作放棄地の増加で人間の生活域にも近づいている」として感染対策の徹底を求める。