植物工場基に研究
宇宙での農産物生産は人工光型植物工場を想定。ただ、月面や火星の宇宙空間は地球と生育環境が大きく異なり、対応が必要だ。
そこで同大は国立大唯一の園芸学研究科を有し、1970年代から植物工場の研究を行ってきた豊富なノウハウが生かせると判断。同大の他の研究院と連携し、センターを立ち上げた。NASAやJAXA(宇宙航空研究開発機構)、農研機構、民間企業とも協力していく予定だ。
研究分野は、①宇宙品種②生産技術③廃棄物を出さないゼロエミッション――の三つ。栽培品目はトマト、キュウリ、イチゴ、レタス、稲、大豆、ジャガイモ、サツマイモを中心に「人工光+養液栽培」を軸とする。分野ごとに部門長を置き、それぞれ三つのグループで研究を進める。
品種やロボ開発
宇宙品種は、宇宙環境(微小重力・真空・宇宙放射線)に適応した品種をゲノム編集などで選抜。芋類は、月の砂「レゴリス」を土壌代わりに使う方法も研究候補に挙げる。
高効率な生産を実現するため、まずは光や温度、水、風など宇宙で農産物が育つ環境を遠隔管理できる体制を整える。農作業はロボットを想定。微小重力への対応やロボットによる人工授粉技術の開発などを研究テーマにする予定だ。
限られた資源の再利用を掲げ、ゼロエミッション技術の確立にも取り組む。民間企業と連携し、食料残さを肥料にする装置や捨てる部分が少ない品種の開発などを目指す。
開発した技術は、地球上での過酷な場所での生産にも応用できる可能性がある。高橋秀幸センター長は「極限環境に適応した宇宙園芸学を確立させ、その技術を地球上の農業にも還元させたい」と意欲を見せる。