長野県の50代の男性から本紙「農家の特報班」に投稿があった。農薬には、収穫日の何日前まで散布してよいかを示す使用基準「収穫前日数」がある。摘果も収穫に当たるため、基準違反のリンゴが出品されている可能性があるという。
「加工用です」「ジャム、リンゴ酢、シードルなどに」──。9月上旬、大手フリマアプリのメルカリで「摘果リンゴ」を検索すると、こんな出品が無数に見つかった。価格は10キロ2000円前後。出品は7月ごろに始まり、8月に増えていた。記者が検索した際には24時間で約100件もの出品があった。
一般にリンゴは、花の満開後30日までに粗摘果、60日までに仕上げ摘果を行った後、収穫まで生育不良果などの摘果を続ける。メルカリに出品されたリンゴを見ると、いつ、どんな農薬を使い、いつ摘果したかを記した物はほとんどなく、使用基準に違反しているかどうかは分からない。
だが、摘果リンゴはフリマアプリ以外には販路が少なく、廃棄する場合が多い。通常の収穫と同じ使用基準が適用されると知らないまま、農家が出品している可能性もある。
JA全農長野によると、県内のJAは摘果リンゴを製菓・酒造メーカーなどと取引している。農薬を収穫前日まで使用できる薬剤に変えたり、防除記録や摘果の日付をJAが確認したりと、農薬の使用基準に違反しないよう指導を徹底。「食用に出荷する前提で栽培しないと、基準を守るのは難しい」(果実花き課)と説明する。
投稿してくれた男性は製菓業者で、地元のJAを通して摘果リンゴを仕入れ、菓子などに加工する。防除暦の見直しで、農薬の使用基準に違反しない摘果リンゴを仕入れる体制を整えたという。男性は「ルールを守らない摘果リンゴが出回り、万が一被害が出たら大変なことになる。農薬の適正使用が必要と知ってほしい」と話す。
農薬の使用基準で、薬剤を最後に散布した日から収穫(摘果)日まで、それ以上空けなければならない日数のこと。この日数を守れば残留農薬の量が基準値以内に収まり、収穫物の安全が担保されることを確認して定められている。
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