青果卸9割営業黒字 巣ごもり特需、業界冷静 20年度
全国中央市場青果卸売協会に加盟する79社と、売上高150億円以上の青果卸を対象に、計88社を調査。事業報告書の開示を依頼し、69社から回答を得た(回答率78%)。
19年度までの3年間は、売上高が前年度を上回る増収はわずか1割だったが、20年度は一変。増収は80%(88社中70社)に上り、本業のもうけを示す営業損益も91%(69社中63社)が黒字を計上した。
好調の要因は、巣ごもり需要に伴い小売りの仕入れが活発化したことにある。加えて、夏は長雨と日照不足で軒並み品薄高となり、売上高を押し上げた。下半期は一転して野菜の低調相場が続いたが、上半期の貯金が上回った。営業活動が制限され出張・交際費が激減したことも、増益に寄与した。
■実需に応える機能強化急務
軒並み改善した決算にも、楽観視する卸は少ない。「今期は例外的な要素を含み、来期はコロナ次第で未知数」(中四国の卸)だからだ。巣ごもり需要は勢いを失う一方、業務需要は回復のめどが立たない。一過性の結果に終わらせない、安定成長の手立てが必要となる。
好調な企業の取り組みに、ヒントがある。前年度比1割超の増収となった関東の卸は、親会社のネットワークを活用して大手仲卸を場内に誘致し、販路開拓につなげた。卸の再編が加速しており、グループ会社間の流通や販売の連携は今後の鍵をにぎる。
営業利益率が1%を超えた卸は7社。九州の卸はスーパーをサポートする加工・パッケージ事業を強化し、東北や中部の卸は市場にスーパーの配送センターを誘致。地場商材の付加価値化を目指し、冷凍野菜の製造に乗り出す卸もいた。
共通しているのは、実需者のニーズに応えるサービス強化だ。実現の手段として、卸売業にとどまらない多角的な事業展開も進む。市場の立地や産地とのつながりなど自社の強みを最大限に発揮して、実需者のニーズに応える機能強化を急ぐ必要がある。