「影響ある」44%
アンケートは10月12~24日、LINEで「農家の特報班」の友だち登録者に行った。116件の回答があり、「大きな影響がある」が19%、「やや影響がある」が25%。JAや卸売市場を通じた委託販売には農家のインボイス発行が不要となる特例があるため、影響が大きいのは、これら以外の販路を持つ免税事業者の農家とみられる。
買い取り価格引き下げ
和歌山県の水稲農家の70代男性(免税事業者)は、米の納入先から、取引を続けるなら代金から消費税相当分を差し引くと告げられた。米の売り上げのうち、かなりの割合を占めており、「せっかく見つけた売り先。納得はいかないが、了承するしかなかった」と話す。
茨城県でサツマイモを栽培し、干し芋に加工する60代の男性(同)も、販売先の卸売業者に買い取り価格が引き下げられそうだと教えてくれた。課税事業者になって消費税を納める方が負担が大きいとみて制度には登録しない方針だが「もともと収入の少ない免税事業者ばかり影響が出る。国が決めたこととはいえ、納得がいかない」。
「無言の圧力がある」
「取引先から無言の圧力がある」と話すのは、富山県の水稲農家の30代男性(同)。制度に登録したか聞かれており、取引停止や関係の悪化を懸念する。だが、仮にそうなっても「理由は告げられず、知らないうちに取引がなくなるだろう」とみる。一方、取引先も免税事業者から仕入れると税負担が増えることを考慮し、「制度が悪い」と批判する。
事務負担が増加
栃木県のネギ農家の20代男性は免税事業者だったが、課税事業者となり、制度に登録することを選んだ。一定量を飲食店など事業者に販売するためだ。しかし新たに消費税を支払う必要が生じ、インボイス発行など事務作業の負担も増加。「畑に出る時間が短くなった。取引先に渡す書類も、この書き方でいいのか不安だ」と話す。
子牛のせり取引も、農家のインボイス発行が不要となる特例の対象外だ。栃木県の畜産農家の60代男性は「せりで価格が下がるのではないかと思い、制度に登録した」と話す。
逆に、課税事業者の農家が生産資材などを仕入れる場合、仕入税額控除をするには、インボイスを受け取る必要がある。熊本県の畜産農家の60代男性は、「地域にはインボイスを発行できない小さな店もある」と指摘。急な資材の購入などで控除ができず、困る場面が出てくるとみる。
制度複雑「間違いのもと」
西日本のJA職員の50代男性は、複雑な制度への対応に苦労している。農産物の販売が特例に該当するかどうかの判断、インボイスの登録番号の確認、課税事業者か免税事業者かの確認など、職員がそれぞれの持ち場で対応を迫られ、「間違いのもとだ」とこぼす。JA職員からは、事務作業の負担増を訴える声も複数寄せられた。
宮城県で直売所を運営する70代の男性は、出荷農家の手数料を引き上げざるを得なかったという。会計時に、農家が出荷した農産物をいったん買い取り、客に販売する「消化仕入方式」で販売。免税事業者の農産物は仕入税額控除ができず、直売所の税負担が増えるためだ。「ほとんどが免税事業者。出荷をやめる人が出ないか心配だ」と話す。
一方、茨城県の水稲農家の70代女性は、出荷する直売所から制度への登録を促された。自身は以前に税務関係の仕事をしていたため直売所の説明が理解できたというが、「他の農家は、消費税の負担が増えることを納得して登録したのだろうか」と気にかける。
無料通信アプリ「LINE」から「のうとく」アカウントを友だち登録し、調べてほしいことをメッセージでお寄せください。記者が目を通し、取材の参考にしています。また、友だち登録者には定期的にアンケートも実施しています。
登録には▶こちらのリンクにアクセスいただくか、右記のQRコードをスマートフォンのカメラで読み取り、表示された画面で「追加」を押してください。
■SNSも更新中
▶公式X
■これまでの「のうとく」
▶記事一覧へ
■読者の声を紹介
▶特集(10月9日付)