女性農業者の知恵や視点を農業に生かそうという農水省の「農業女子プロジェクト(PJ)」 が11月でスタートから10年を迎え、同省で24日、女性農業者や賛同企業が集うイベントがあった。
同PJは女性農業者が日々の生活や仕事、自然との関わりの中で培った知恵を生かしながら、企業などと一緒に新商品やサービスを開発するのが狙い。
この日は同省で推進会議があり、来期の活動方針を決めた後、当初から協力してきた企業に感謝状を贈呈。11人の女性農業者と企業、大学関係者で記念写真も撮った。
同PJは2013年、第1期メンバー37人で発足。現在1000人で、参画企業は34社に上る。4月に宮崎市であったG7宮崎農業大臣会合では、企業と開発した製品を展示、各国の閣僚に直接アピールするなど活動の幅を広げている。
13年に始まった同PJは、活躍する女性農業者の姿を発信し、職業として農業を選ぶ女性を増やすことも狙った。当時は女性農業者間の交流の場が少なく、生産団体や地域の会合でも女性の声が届きにくい状況だったという。
農業構造動態調査によると、女性の基幹的農業従事者数は農業従事者全体と同様に減少し、今年2月時点で45万2000人と10年(90万5000人)から半減した。
一方、メンバーは現在、当初の30倍近い1000人に増加。20~40代が7割を占め、就農歴も半数弱が1~10年目。プロジェクトから派生した地域グループも七つ誕生した。
24日のイベントにはオンラインも含め約100人が参加。10年間の活動をクイズ形式などで振り返り、次の10年につながる11期の活動方針を決めた。
兵庫県多可町で酒造好適米を生産する辻朋子さん(54)は、10期の活動で「山田錦」の米粉を提供し、銀座三越とのコラボでパンを作った。「富裕層をターゲットにした小売業に取り上げてもらえたことで、私たちがやっていることの価値を高めてもらえた」と振り返った。
参画企業34社のうち、2013年当初からからの井関農機、サカタのタネ、ダイハツ工業、タニタ、丸山製作所、三越伊勢丹、モンベルが感謝状を受け取った。
井関農機は、シートの位置を前後にスライドして調整できるトラクターなどを開発。ダイハツ工業は、紫外線カットガラスが付いた軽トラックを開発。いずれも当初は「女性の使いやすさ」が目的だったが、その後、標準装備となった。