静岡県袋井市でハウスメロンを栽培する太田雄一さん(68)は、最高値の更新を戸惑いとともに受け止めた。太田さんが支所長を務める県温室農業協同組合クラウンメロン支所の産出額は、91年に111億円と史上最高を記録。王冠のロゴが入った「クラウンメロン」の箱は、バブル全盛期に東京・銀座などに並び、トップブランドを確立した。
ただ、直近の産出額は全盛期の3分の1以下。一方で、近年は贈答に加えて菓子や加工品に需要の裾野が広がった。メロン産業の発展には需要の安定が欠かせない。太田さんは「好景気の実感がない。格差が広がり高級品の需要は先細るのではないか」と懸念する。
「市場1カ所で600ケース(160万円)売れたこともあった。花を買ったり贈ったりして、新しい店や新築の家に花を飾る雰囲気が日常にあった」と振り返るのは山梨県中央市の花き農家、石原有亨さん(71)。当時はシクラメンなど3種類で経営が回った。現在はハウスや露地の約50アールに規模を広げ10種類以上に。切り花やドライフラワーも販売する。
6年前に経営を譲った息子の玄太さん(37)には「売り上げ増に知恵を絞り、堅実経営を続けてほしい」と願う。
栃木県栃木市で和牛の肥育からレストラン経営までを一貫して手がける「肉のふきあげ」の小池雅弘社長は「毎週末、首都圏からのゴルフ帰りの団体予約が入っていた」と懐かしむ。
和牛改良が進み、当時より枝肉重量は増え、枝肉価格も上がった。だが、飼料価格や子牛価格などの生産コストはそれを上回る上昇で、「価格転嫁はできていない」と肩を落とす。