給食センター防災拠点に 食料備蓄・炊き出し “進化形”全国で整備
日本農業新聞が国や全国の自治体などに取材したところ、災害対応も兼ねた給食センターは15年前に建設が始まり、現在少なくとも11施設ある。
兵庫県淡路市が2010年に完成させた「防災あんしんセンター」は、1階で日々の給食と災害時の炊き出しを行い、2階で災害対応を指揮する。3000食の精米を備蓄、自家発電機やLPガスの貯槽と供給設備が一体となった「災害対応バルク」も設置。1995年1月の阪神・淡路大震災で同市(当時は旧5町)は3000戸超が全壊。避難者全員の食事を供給できなかった教訓を踏まえた。
11年3月の東日本大震災で被災した岩手県花巻市も15年、給食センターの一つに災害対応バルクを導入。停電で避難者の食事作りに不自由したためだ。一方、16年4月の熊本地震の被災地、熊本県益城町は19年、電気の復旧が早かったことに着目、非常用電源を備えたオール電化の給食センターを新設した。
都市直下型地震が想定されている東京でも福生市が17年、防衛省の補助金を活用して避難所を兼ねた総合防災拠点「防災食育センター」を建設。災害時には1万5000人に3日分のおにぎりや汁物を提供する他、全国からの支援物資や応援要員も受け入れる。同省補助金を充てた同様の施設は、福岡県行橋市、北海道白老町、宮崎県えびの市、京都府精華町でも建設された。
長野県立大健康発達学部の中澤弥子教授は「能登地震では避難者の食事作りが課題となった。自然災害が増え、さまざまな事態を想定した備えが必要になっている」と語る。