随意契約により放出される政府備蓄米を巡り、地方によって購入機会に差が生じる可能性があることが分かった。日本農業新聞が随意契約を申し込んだ大手小売業者の出店状況を調べたところ、関東に全体の4割が集中し、東北、中国、四国は店舗数が少なかった。随意契約は公平性の課題が指摘され、大都市での販売が相次いで報じられる中、地方にも広がるか注目される。
随意契約は、国が販売価格を決めて売り渡す仕組み。小泉進次郎農相が就任後、随意契約による備蓄米放出を決定。大手小売業者を対象にした枠では、22万トンの申し込みがあった。企業が購入した備蓄米は消費者に直接販売するルールで、他の小売業者や飲食業者などへの販売は禁止。消費者が買えるのは、購入した企業がグループ内で展開する店舗、またはネット通販サイトに限られる。
本紙は契約を結んだ61社のうち、企業のホームページで店舗情報が確認できた48社の出店状況を調べた。
購入できる可能性がある店舗が最も多いのは東京都で、約2200店が存在した。一方、店舗数が少なかったのは鳥取県と島根県で60店前後だった。店舗数だけの単純計算だと、備蓄米が買える機会は東京の40分の1以下になる。
他に、秋田県、山梨県は店舗数が100を下回っていた。輸送面では最も不利と思われる沖縄県は約180店と一定の水準を確保。同県でスーパーを展開するサンエーが随意契約に参加しており、県民が購入できる可能性は高そうだ。
地方別でみると、関東は約6500店が集中し、全体の37%を占めた。次いで近畿が約3000、中部が約2900と続いた。いずれもそれぞれの地方に本社を置く企業の参加が多くみられた。
一方、四国は全体の4%に当たる約650店にとどまった。四国に本社を置く企業は随意契約に参加しなかった。なお、北海道は地方別では四国と同水準の4%だが、都道府県別では上位に入る。
米の不足感は地方ごとに異なり、「米の生産量が少ない西日本の中山間地ほど深刻」(大手小売店)との声もある。ニーズが高いとみられる地域で、備蓄米が届きにくい実態が浮き彫りになった。
政府与党内からも、備蓄米放出が平等でないと指摘する声が出ている。中小小売業者と米穀店を対象とした8万トンの随意契約で、公平性を確保できるかが焦点になりそうだ。
(金子祥也)
