[論説]韓国で相次ぐ口蹄疫 水際対策の強化が急務
韓国農林畜産食品部によると口蹄疫の発生は2019年1月以来、4年ぶり。5月10日に同国中部の忠清北道清州市で発生して以来、19日には11件と感染が拡大している。9件は肉牛で発生し、2件は同市から北に約20キロ離れた曽坪郡の肉牛とヤギで発生した。発生地域は畜産農家が密集しており、今後も感染が拡大する可能性は高い。
現地報道によると、今年初めて発生した清州市の場合、発生農場から3キロ圏内には牛や豚、鹿、ヤギなどを飼育する農家が236戸あり、飼育頭数は計4万頭。曽坪郡の場合は同179戸で計3万頭を飼養している。
同国政府は、感染拡大に歯止めをかけるため、発生地域だけでなく、隣接する地域の農場への立ち入りを規制し、消毒を徹底するとともに偶蹄類のワクチン接種を急いでいる。口蹄疫防疫実施要領に基づき、感染した家畜の殺処分を実施しているが、予断を許さない状況だ。
同国での発生は、日本の畜産にも脅威となっている。訪日客の増加に伴い、違法な肉製品が持ち込まれている。
日本政府観光局によると今年1~3月の韓国からの訪日者数は計160万人。前年同期比の180倍に上り、コロナ発生前の9割まで回復した。これに伴い、土産などで持ち込んだ肉製品が輸入検疫で「不合格」となる事例が多発している。
動物検疫所によると、探知犬などの活躍で不合格となった件数は、韓国からの肉製品が4811件(1~3月)と、中国(2460件)を超えて最も多かった。1日平均で53件が検疫で不合格となっている計算で、水際対策の一層の強化が求められる。
国内では10年4月に宮崎県で口蹄疫が発生、約30万頭もの牛や豚が殺処分を余儀なくされた。農水省の疫学調査ではウイルス株の遺伝子が、同時期に韓国や香港、ロシアで分離された株と近縁で、中国の株と極めて近い(99・5%)ことが分かった。近隣諸国での発生に伴う人や物の往来が、感染の要因となったとみられる。
一方、日本から海外に旅行する場合も注意が必要だ。1~3月の海外への出国者は、前年同期比8倍増の約168万人。専門家は「畜産関係者の発生地域への農場視察は自粛してほしい」と呼びかける。官民挙げてウイルスの国内侵入を食い止めよう。