[論説]外来カミキリに警戒 早期発見で被害防ごう
この害虫は体長2~4センチ。成虫はつやのある黒色で、首が赤い。桃、梅、桜、スモモなどバラ科の木を好み、幹や枝の樹皮の隙間に卵を産む。幼虫は樹木の内部で2~3年を過ごし、外に木くずとふんの混合物(フラス)を出す。さなぎを経た成虫が、外に出て繁殖・産卵する。
2012年、愛知県で初めて被害が確認された後、関東や近畿を中心に広がった。18年に特定外来生物に指定された。現在も被害地域・樹木数が増えている県は少なくない。成虫が飛んで移動する他、トラックの荷台に張り付くなど、人の移動に伴って広がることも考えられている。
被害を防ぐには、早期の発見・防除が重要だ。群馬県は、6~10月に「ぐんまクビアカネット」を運用する。成虫や、幼虫の痕跡であるフラスを発見した日時と場所をスマホなどで入力すると、ネット上の電子地図に反映される仕組み。県は幅広く情報を募り、いつ、どこで害虫を発見したのかを共有して園地での警戒を強め、早期防除に役立てている。
栃木県は、成虫が樹木から出て活動を始める日(初発日)を気温で予測する方法を開発した。例えば今年、県南部・佐野市の初発日は6月1~3日と推定。これを基に園地を定期的に巡回して産卵の前に成虫を見つけ、効果的に駆除することで木を食害する幼虫の発生を抑える。
また、ホームセンターなどで購入できる「ブラックライト」を樹木に当て、卵を発見できることも突き止めた。紫外線が当たると卵が光る性質を利用し、見つけたらつぶす。成虫が活動する6月上旬から探し始める。薄暗い時間帯が見つけやすいが、日陰でも確認できるという。
繁殖力が強いクビアカツヤカミキリは成虫・幼虫への総合的な対策で、生息密度を下げることが重要だ。成虫は薬剤散布の他、木の被害部にネットを巻き、分散を防ぎながら捕殺する。幼虫は外に出すフラスが目印。内部に届く排出孔から刺したり、薬剤をスプレーしたりする。
ただ、被害は街路樹の桜や放棄園の果樹など、人目の届きにくい所でも発生し、対策を難しくしている。放置すれば樹木の伐採が必要になり、農家の負担は大きい。早期発見に向けて、情報共有や園地の巡回などを行い、官民一体で被害を抑えよう。