[論説]介護保険制度の見直し 支え合う仕組み強固に
介護保険制度は現在、2024年度改正に向けて議論が本格化している。厚生労働省の審議会部会は、65歳以上の高所得者の介護保険料を増額する案を大筋で了承した。年間所得410万円以上の約140万人を想定する。
焦点は、利用料2割負担の対象拡大などで、社会保障費の逼迫(ひっぱく)を背景に、財源をどう確保するかだ。所得に応じて負担を求める「応能負担」は、ある程度は致し方ない。だが、物価高で高齢者の家計が圧迫され、介護サービスの利用を控えるといった制度自体の縮小につながらないか心配だ。制度の持続に加えて、介護の仕組みをより堅固にするには、支え合いの網目をきめ細かくし、大きく広げる必要がある。
JA兵庫六甲は10月、兵庫県猪名川町の委託を受け、支店内に地域包括支援センターを開設した。日常生活の困り事から介護保険を利用するための要介護認定まで担う、総合相談窓口だ。組合員や住民にとってJAの支店という身近な存在が、「助けて」を言いやすい環境をつくり、介護支援への垣根を低くすることにつながる。
滋賀県のJAこうかは、直売所で買い物代行サービスを実施する。交通不便な場所で暮らす高齢者ら「買い物弱者」の支えになるのはもちろん、食品を自宅に届けることで安否確認も兼ねている。「事業の収支は厳しいが、地域貢献活動として続けたい」(園芸特産販売課)と捉える。
こうしたJAの動きこそが、支え合いの網目をきめ細かくする。組合員や住民に寄り添い、悩みや困り事に対応する姿勢が、安心して老いることのできる暮らしを実現する。地域になくてはならない存在としてJAの役割発揮を期待したい。
そのためにも、医療・介護・福祉事業から女性部・青年部らのボランティア活動まで、多様な組織と人材によって組合員・住民の健康を守る「JA版地域包括ケアシステム」の構築を急ごう。
25年には、全ての団塊の世代が後期高齢者となる。超高齢社会は目前だ。誰もが年を重ね、心身は衰える。支えを必要とした時に気軽に相談できる場所がある、差し伸べられる手があること──。頼り合えるまちづくりは、当事者や家族らの安心につながり、介護の一助となる。専門的なケアと共に、住民同士の支え合いの輪を広げよう。