[論説]イスラエル、ガザ衝突 停戦へ声上げ続けよう
10月7日、イスラエルに越境して攻撃を仕掛けたのはハマス。その報復として、イスラエル軍は「ハマス壊滅」を掲げ、大規模な空爆を始めた。同月下旬からは「戦争の第2段階」を宣言し、地上戦を本格化。11月下旬には、双方の合意で戦闘休止が実現したものの、12月に入ってイスラエル軍は攻撃を再開した。
この間の犠牲者は、ガザ地区で1万6000人以上、ハマスの襲撃を受けたイスラエル側で1200人に上るとされる。さらにガザ地区で働く国連機関の職員も100人以上が犠牲になっているという。死者が増え続けている状況は、国際社会の一員として見過ごすことはできない。
戦闘のきっかけとなったハマスの越境攻撃は、市民を無差別に殺害したり連れ去ったりするなど許されないテロ行為だ。一方でイスラエルの軍事行動も、子どもを含む民間人の犠牲を顧みることなく、病院や避難所などを標的にするなど、自衛や反撃の域を越えている。国連のグテレス事務総長は、ガザ地区の状況を「明白な国際人道法違反」「子どもたちの墓場になりつつある」と強い言葉で非難。ハマスの攻撃についても「何もない状況で急に起こったわけではない」と指摘する。
背景には、長期に及ぶ歴史的なわだかまりがある。中でもパレスチナ人の土地にユダヤ人を移住させる入植活動が、両者のあつれきを生んできた。国連安全保障理事会は2016年、入植は「国際法の重大な違反」として停止を求める決議を採択。今年2月にも国連安保理は、イスラエルの入植地拡大計画を非難する公式声明を発表。国際社会の再三の制止を無視して入植が続けられてきた事実を忘れてはならない。
思いをはせたいのが、戦火の中の農家だ。パレスチナ産オリーブオイルを輸入するオルター・トレード・ジャパンの小林和夫氏は、入植したユダヤ人による暴力がこれまで以上に激しくなり、農地に近づくこともできないというパレスチナの農家の現状を、日本農業新聞で報告した。
戦争によって最も苦しむのは市民だ。同じ地球で起きていることとして、日本からも関心を寄せることが停戦への一歩となる。日本政府は、イスラエルとアラブ諸国双方との関係を築いてきた立場を生かし、停戦の実現へ役割を果たすべきだ。