[論説]春節の家畜防疫 訪日客増に警戒強めよう
2024年の春節は、2月10日が旧暦の元日に当たり、これに伴い、1月26日から3月5日までの間に長期の休暇を取って移動する人が多い。日本政府観光局の中国市場動向によると、昨年の1、2月は新型コロナによる規制で中国からの観光は困難な状況だった。昨年8月以降の規制緩和で増加傾向となっており、今年1、2月の旅客数は前年を大きく上回る見通しだ。
警戒が必要なのは、不正に持ち込まれる畜産物だ。動物検疫所が1月に公表した昨年11月の輸入検疫状況では、中国からの携帯品検査で不合格となり、日本国内への持ち込みを食い止めた畜産物は2500件以上。郵便物でも不合格となった畜産物が同程度あり、多くが肉類だ。
万一、畜産物に口蹄疫(こうていえき)やアフリカ豚熱などのウイルスが付着していた場合、残さなどが家畜や野生のイノシシなどに接触すれば感染し、拡大する恐れがある。海外からの旅客が増加する中、水際対策の徹底が必要だ。
中国を上回り、訪日客が最も多いのは韓国だ。昨年は約700万人が来日し、新型コロナ前の19年を25%上回る。韓国からの出発便で、検疫で不合格となった畜産物は、昨年11月が2600件と、中国からの便よりも多かった。
韓国では旧正月を「ソルラル」と呼び、今年は2月9日から12日までが休暇となる。期間が短いため近距離旅行に需要があり、円安で日本は人気が高い。現地メディアによれば、この時期は北海道の予約が好調という。
今年に入り、韓国の養豚場で、有効なワクチンや治療法がないアフリカ豚熱が新たに2事例確認された。19年に初めて見つかって以来、飼養豚では40例まで発生が拡大した。新たに中東部の慶尚北道でも見つかっている。野生のイノシシでは3500件近くの感染が判明し、拡大は止まらない。
農水省によると、アフリカ豚熱のウイルスは長期間にわたって感染力を維持し、冷凍の場合は1000日以上も生きているという。海外から肉の入った食品を持ち込まないこと、野外に肉製品を捨てないことを改めて徹底したい。加えて服や靴に付いたウイルスを広めない、家畜に近づかないことが重要だ。
万全の水際対策に加え、ウイルスが農場に侵入しない対策をいま一度、確認したい。