同協会によると、最多だった1980年に2437だった会員数は減少傾向が続き、2020年に1000を割り込んだ。大手種苗メーカーの種を小売りする小規模の業者が多く、消費税のインボイス(適格請求書)制度開始を機にやめる例もあったという。
現在も営業する業者だが、岩手県遠野市の在来品種「琴畑かぶ」のように、自家採種が途絶えたものの、地元の種苗店が長年保管していた種から栽培が復活した例もあり、在来品種の継承への影響も懸念される。
独自に開発した品種や在来品種の種を生産、販売する種苗業者は全国で約50前後あるとみられる。業者数は近年、安定しているが、採種農家の高齢化による人手不足といった課題に直面している。
農研機構の在来品種データベース作成にも携わった山形大学農学部の江頭宏昌教授は「採種農家が育てて、種苗業者が種を仕入れる仕組みが行き詰まりつつある。在来品種の保全にとっても問題だ」と指摘する。
こうした課題の解決を図るため、種苗業者や研究者らが「伝統作物種苗保全ネットワーク」の立ち上げを準備している。今秋にシンポジウムを開き、種苗業者の技能継承や在来品種保全へ議論をスタートしたいという。
政府は昨年度補正予算で「野菜種子安定供給緊急対策事業」として2億3600万円を計上。国内の新たな採種地確保に向けた調査や新規で種子生産に取り組む農家への研修などを支援している。