[論説]23年度の青果卸取扱高 連携で選ばれる市場に
全国中央市場青果卸売協会がまとめた中央卸売市場や地方卸売市場で営業する青果卸75社の総取扱高は、前年度比2・7%増の約2兆1181億円。取扱高が前年度を上回った卸売会社は全体の7割に当たる55社で、2年連続で増収したのは41社と過半に上った。ただ、増収要因は取扱量の減少を受けた品薄高に伴うもので楽観視は禁物だ。
各社取扱高を見ると1位は東京青果で、前年度比3・9%増の約2433億円と過去最高。2位は大果大阪青果が3・1%増の約1261億円、3位は横浜丸中青果と14・5%増の約970億円となり、大都市に立地する卸が取扱高上位を占めて好調だった。取扱高は、上位10社で協会加盟全体の約半分を占め、寡占化が進んでいる。
1日には、東京青果など大手卸10社で構成する「青果卸10社会」が立ち上がった。09年結成の「8社会」を強化し、物流24年問題を踏まえた集荷コスト削減や、人手不足、青果物の安定調達といった課題解決を目指す。青果物流通を巡っては、米卸大手の神明ホールディングスが農産物の加工販売を手がける企業などと資本提携を結ぶなど、卸と異業種の連携も進んでいる。
一方、気になるのは大都市周辺の中堅卸の取扱高が前年度割れを起こしていることだ。物流コストの低減に対応し、産地側が農産物を出荷する卸を絞り込んでいるためで、今後は、大手卸などとの連携強化が求められる。
流通経済大学の矢野裕児教授は「物流問題に起因する集荷力の差は今後、広がり得る」とし、打開策として「個別の対応には限界があり、近隣エリアや東西をまたぐ広域集荷などで協調する必要がある」と指摘する。
卸売市場は、産地の生産振興を支え、国民に青果物を安定供給する公共インフラだ。長引く生産資材の高騰で、農業所得は低迷している。卸売会社には有利販売につながる提案を求めたい。
農水省がまとめた国産青果物の卸売市場経由率は、直近(20年度)で74・9%。10年度は87・4%で、ここ10年で12ポイントも低下した。産地が魅力を感じ、選ばれる卸売会社になるためには、卸同士の再編統合や異業種との連携、加工・業務需要の対応、国内外への販路開拓などあらゆる対策を通し、市場の活性化につなげる必要がある。