[論説]高温、豪雨への備え 気象情報生かし命守れ
暑さは年々、厳しくなっている。気象庁によると、東日本と西日本の日本海側の昨年8月上旬の平均気温は、1946年の統計開始以来1位となり、過去最高を更新した。同庁は、日本に厳しい暑さをもたらす「ラニーニャ現象」が9月までに60%の確率で発生するとしており、今夏も暑さ対策が欠かせない。
総務省消防庁によると、今年は既に農林水産関係で63人(19日現在)が救急搬送された。まだ暑さに慣れていない時期だけに、熱中症への警戒が必要となる。
対策の一つとして、暑さが本格化する前に一定期間、ウォーキングなど汗ばむ程度の運動をして、発汗しやすい体をつくり、熱中症を防ぐ「暑熱順化」がある。だが、梅雨に入って気温が下がれば、暑さに慣れてきた体の機能が低下してしまう恐れもある。熱中症を防ぐ体づくりを意識して進めたい。
暑さから身を守る情報として、環境省が新たに運用を始めた「熱中症特別警戒アラート」も活用したい。都道府県単位で重大な健康被害につながる暑さが予測される場合に、前日の午後2時ごろに同省が発表する。同アラートを積極的に農業経営に生かし、水分補給や炎天下での作業を見直す目安にしよう。
沖縄、奄美が梅雨入りし、今後は豪雨への備えも肝心だ。長時間、雨を降らせる線状降水帯は土砂災害などを引き起こす。近年、命を脅かすほどの豪雨が続く背景には、温暖化で日本近海の海面水温が上昇していることがある。海面水温が高くなれば、水蒸気が発生し雨雲が次々に生まれ、豪雨につながる。
気象庁によると、昨年の日本近海の平均海面水温の平年差は1908年の統計開始以降、最も大きかった。今年も複数の海域で水温が平年を上回っている。
暑さや豪雨災害から身を守るためには、気象情報をこまめに確認し、事前に避難場所や非常用品を把握しておくなど、意識して日々の行動を変えていくことが必要だ。
気象庁は、線状降水帯が発生する半日前に予測範囲を発表している。28日からは、その範囲を全国11ブロックから都道府県を基本とした単位に細分化。29年からは市町村単位とする方針だが、住民がスムーズに避難行動などに移れるよう、前倒しで実施してほしい。命を守る気象情報の拡充を求めたい。