[論説]介護の社会化 JAは“福祉力”発揮を
厚生労働省の推計によると、40~64歳が負担する介護保険料は2024年度、平均1人当たり月6276円と過去最高を更新し、制度開始当初の2000年度(月2075円)の3倍に上る。高齢化によって介護保険サービスの利用が増え、膨らみ続ける介護費用に財源が追い付かない。
24年度の介護保険改正案では、65歳以上で年間所得が420万円以上の人は保険料を引き上げ、所得の低い人は引き下げる方針だ。同じ世代の中で負担を分け合い、個々の支払い能力に応じた「応能負担」を進める。これによって実質的な保険料が増え、公費を抑える狙いがある。ただ、今後の急速な少子高齢化を見据えれば、抜本的な解決策にはつながらない。
介護保険制度は「介護の社会化」をうたい、始まった。従来、家族中心だった介護を、社会全体で担うのが狙いだ。その「介護の社会化」には公的制度の持続と充実を求めると同時に、民間の力も結集するべきだ。農村の高齢化にいち早く対応してきたJAの役割に期待したい。
JAには福祉事業という基盤がある。ミニデイやサロン、体操教室、配食など無償・有償ボランティア活動を展開し、公的制度から外れる人の受け皿ともなっている。職員はじめ女性・助けあい組織、青壮年組織といったマンパワーを生かし、支え手の輪をきめ細かく広げ、組合員・住民の心身の健康を守る。
例えば滋賀県JA東びわこ助けあい組織は、カフェを開いたり絵はがきを送ったりして、高齢者を活気づける。富山県JA高岡女性部「萌(もえ)ぎの会」は30年前から、病院ボランティアやサロンで支援を続ける。日々の暮らしに寄り添う存在は、地元のお年寄りにとって欠かせない。身近で頼りになるJAの“福祉力”を高めることが、地域貢献、ひいてはJAのファンづくりにもつながるだろう。
公的制度からは専門的な技能を、民間からは日常の困りごとに差し伸べる手を、幾重にもケアを重ねることが「介護の社会化」を強くする。
来年は団塊の世代が後期高齢者になり切り、高齢社会が一気に加速する。誰にでも訪れる老いは、決してひとごとではない。個人の自立と尊厳を保ち、安心できる老いを迎えられるよう、JAが核となって地域を挙げて支える仕組みづくりを急ごう。