[論説]参院選へ農政連候補 試される農業者の結束
東野氏は北海道名寄市出身。JA道北なよろ組合長などを歴任した。立候補の所信表明では、厳しい農業環境や将来不安から、農業を子に継がせることをためらう親世代の苦悩を訴えた。担い手確保に向けて「農業を魅力ある産業にする」と強調した。
全国農業者農政運動組織連盟(全国農政連)は今後、自民党に対し、東野氏の公認を申請する。
参院選に向け、求められるのが東野氏を支えるJAグループの結集力だ。比例代表は、選挙で得た票数によって業界団体の組織力や政治への影響力を推し量る「物差し」と言われる。来夏に任期満了を迎える山田俊男氏は07年の初当選時は自民党内2位の約45万票を獲得し、JAグループの集票力を示した。
13年以降は、山田氏と藤木眞也氏が当選を重ねるも、得票数は減少を続け、22年の藤木氏は18万票台まで落ち込んだ。得票数は同党の比例代表候補中、7番目だった。
得票数減少の背景には、第2次安倍政権以降の農協改革や環太平洋連携協定(TPP)など、農政やJAに対する厳しい対応への不満や不安があるとされるが、「農業団体の政治力低下」や、一連の貿易自由化や改革が一服したことによる「政治離れ」を指摘する声もある。
だが、国民の食を支える農業の現場を代弁する候補の力が弱まれば、農業者の声はますます中央に届かなくなり、農政は弱体化する。
実際、食料・農業・農村基本法が制定された25年前と比べて、政府全体の当初予算は4割近く増えているのに対し、農林水産関係費は3割も減少した。生産資材価格が高騰する中で、農畜産物の価格転嫁は進まない。食を支える農業を軽視すれば、そのつけは国民全体が負うことになる。農業者の声を結集し、政治に働きかけ、この国の農業、農村を大事にする政策へと変えていく必要がある。
衆院選は「1票の格差」の是正で、選挙区の数が都市部に一層集中し、参院も人口の少ない隣接県同士の「合区」などが定着。国政選挙の“都市型化”が加速し、農業現場の声が届きにくくなっている。それだけに、比例代表選挙の重要性が高まっている。推薦候補となった東野氏が国政で苦難の農業・農村の未来を切りひらけるかは、農業者自らの力にかかっている。