全国食肉学校を卒業してすぐ、私は全農中央畜産センターにできたハム・ソーセージ工場の担当になりました。総勢10人に満たない小さな工場でしたが、教えてくれる先輩がいない中、開発、製造、営業、管理のすべてを任されました。冒頭の文章はお肉検定初年度に私が書いたものですが、まさに豚肉は生き物で、大切に扱えばそれに応えて変化してくれるし、手を抜けばすぐに品質を損ねてしまいます。
2週間の塩せき・熟成で醸し出される豚肉の香りは格別で、それをたこ糸で丁寧に巻いて径を一定にし、スモークハウスでじっくりと加熱をします。自分のオリジナルレシピでできたばかりのハムを持って、スーパーYのSバイヤーに試食してもらいました。塩味が濃いとか、薄いとか、ハーブがどうとか言われて、レシピをアレンジして再度製造し、またすぐに持って行きます。「よし、これで特売やるぞ!」と言われた時の気分は最高です。
パートさんに無理をお願いして、土日を返上し総出で製造を頑張っていたところ、Sバイヤーが工場に手伝いに来てくれました。その時は感動で涙が出ました。特売ではN店に行って自らマネキン販売をしました。試食してくれたお客様がハムを手に取って「これおいしいわね」と、買い物かごに入れてくださった時の喜びは、何物にも代えがたいものでした。古き良き想い出です。
公益社団法人全国食肉学校
専務理事学校長
小原和仁