[論説]孤立する高齢者 多様なつながりの場を
2024年版高齢社会白書は、親しくしている友人・仲間が「たくさんいる」と答えた人が7・8%と、18年度の前回調査24・7%に比べて大幅に低下した。人と話す頻度が「毎日」ある人は72・5%で、前回の90・2%を大きく下回った。1日の間に、誰とも話していない1人暮らしの人も目立った。白書は「コロナ禍による影響も踏まえつつ、望まない孤独・孤立に陥らないようにするための対策が必要だ」と指摘する。
人と直接会って、触れ合う機会が減ったのはコロナの影響が大きかった。特に感染しやすい高齢者は注意しなければならず、これまで参加していたJAのサークルやボランティア、趣味の活動が停止となり、家に引きこもりがちとなった。この間、孤独や孤立を深めた人は多いだろう。
昨年、季節性インフルエンザ並みの「5類」へ移行し、徐々に社会活動が復活してきた。コロナ禍による引きこもり脱却へ、1人暮らしの高齢者に対応するため、誰もが気軽に集えるサロンのような空間が一層、求められてくる。
肝心なのは、高齢者が率先して参加し、生き生きと活躍できる場をつくることだ。高齢になると心身機能の衰えなどで自信を失いがちだが、その人の生きざまに寄り添い、耳を傾けてくれる誰かがそばにいることで、自らの経験を生き生きと語り出すことがある。これまで培ってきた“経験”や“技”を存分に発揮してもらう場をつくることで、気持ちの張りを取り戻せる。
例えば、統廃合が進むJAの空き店舗や、廃校の一部を改装してサロンやカフェを作れないか。郷土料理作りや漬物加工など経験豊かな年長者をゲストに招いて教えてもらおう。現役を引退した農家に、子どもらの農作業体験の先生になってもらうのもいい。彼らの経験と技術が生きる事柄はたくさんある。そうした場で若者が学び、次代へとつないでいく。高齢者が気軽に集える場から世代を超えて交流できる場へ、多様な人が集まる空間があれば、地域は活性化するだろう。
JAや自治体が先頭に立って高齢者をはじめ多様な人が楽しく、自らの役割を発揮できる場をつくりたい。人と人が関わることで刺激をもらえ、生きる意欲も湧く。年を重ねても誰一人取りこぼさない、孤立させない、つながり合える地域を築こう。