[論説]大詰めの地域計画 策定本格化へ後押しを
地域計画では、おおむね10年先を見据え、地域の話し合いに基づいて農地1筆ごとに誰が利用するかを明確にした目標地図を作る。生産基盤の土台となる「人」と「農地」についての、各地域による展望づくりとなる。
国全体で見ると、「人」と「農地」を巡る現状は厳しい。2000年に240万人いた基幹的農業従事者は、23年には116万人と半分以下に減少。さらに農水省は20年後には30万人にまで減る恐れがあるとする。耕地面積も2000年の480万ヘクタールから23年には430万ヘクタールを割った。
減少の一途に歯止めをかけるためにも改正基本法に期待したい。同法は食料安全保障の確保を掲げ、生産基盤の維持・強化が最優先課題だ。担い手を育成する従来方針に加え、初めて「多様な農業者」を位置付け、地域での協議に基づいて担い手と共に農地を守っていく道筋を示した。
ただ、現場段階では多くの課題を抱える。農業者の高齢化と担い手不足、地域条件の難しさなどに加え、地域計画作りを主導する市町村の農政担当者も減り、国の支援はあるものの、策定作業に十分手が回らない現実がある。
地域計画は来年3月末が策定期限だが、協議の場を設置した市町村は、今年3月末時点で76%にとどまる。農業者らと協議して目標地図を作り、その先には地域計画案を作成し、決定するステップが控える。策定期限に間に合わせるには、7月末までを目安に協議の場を設置するよう同省は提案する。8月以降、農閑期を活用しながら話し合いが進むことを期待しており、これからが重要な期間となる。
自給率が低迷する中で、生産基盤の維持・強化は待ったなしであり、策定期限を守るのは不退転の姿勢として欠かせない。ただ、人手などに制約があるのも事実で、まずはできる範囲で地域計画作りを前進させたい。そのためには国の後押しが重要だ。地域計画の積み上げが、食料安全保障を強固にするからだ。改正基本法を追い風に、支援の充実を求めたい。
地域農業の将来像を描くには「人」と「農地」に加え、作物も重要な要素となる。何を作ればどの程度の所得を得られるかといった展望も、地域計画の議論と同時にできれば、より活発になるだろう。地域の農業振興計画をまとめるJAの出番も期待したい。