[論説]南海トラフ地震注意 慌てずに備えの点検を
南海トラフ地震は、静岡県駿河湾から九州南東部までの海底に延びる「南海トラフ」で発生が予想される、マグニチュード8以上の巨大地震を指す。政府は2011年の東日本大震災以降、14都県139市町村を「津波避難対策特別強化地域」に指定し、想定される津波の高さに応じた避難施設の整備などを進めてきた。最大は高知県黒潮町の34・4メートルで、実際に到達すれば全国で最悪32万人余りが死亡すると予想されている。
臨時情報は、地震の規模などを基に「調査終了」「注意」「警戒」に分け、国民に段階に応じた対応を求めるものだ。発生確率が最も高い「警戒」の場合、いつでも避難できる準備を2週間程度続ける必要がある。
内閣府によると、全国に整備された津波避難タワーは427棟あるが、多くが建設から10年近く立ち、周辺地域でも巨大地震への警戒心が薄れつつある。お盆の時期に、家族で改めて日頃の備えを点検しておく必要がある。
今回の「注意」発表を受けて、慌ててトイレットペーパーなどの日用品を大量に買い急ぐ動きも出てきた。災害に備えるのは重要だが、過剰な行動はパニックを引き起こす。気象庁は「この1週間で大規模地震が必ず起きると言っているわけではない」としており、過剰に買い占めない冷静な判断が欠かせない。
その上で、巨大地震に備えた家庭や職場での対策を進めたい。同庁は「事前避難の必要はないが、日頃からの備えを確認し、巨大地震が起きたら、すぐ避難できる準備をしてほしい」と呼び掛ける。
具体的には、家具を固定する転倒防止器具の設置や、非常用袋(懐中電灯、予備バッテリー、携帯ラジオ、軍手、飲料水、非常食、貴重品、マスク、常備薬、簡易トイレ、女性なら生理用品など)の準備はできているか、1週間分の食料備蓄はできているか、チェックしてほしい。
さらに避難場所はどこか、経路の確認、家族との連絡方法などを確認し、不足があれば早急に対応したい。特に1週間ほどは、国や自治体などからの情報に注意し、地震発生時には素早い避難につなげよう。深呼吸を忘れず、冷静な行動を心がけたい。
巨大地震の際は、自らの命を守ることが先決。次に家族、周囲を支え、被害を軽減しよう。