[論説]拡大する枝物市場 露地栽培で商機つかめ
花き業界は、トレンドが周期的に変化する。13年ごろからの豪華さ重視の大輪ブームは一服し、枝物や草花を使い、野山の風景を切り取ったような花束や装飾が好まれている。都市部の生花店では枝物だけの束が定番商品になった。農業所得向上へ、こうしたニーズを見極めたい。
売れる代表品目がユーカリだ。栽培は全国に拡大し、各地区大手7卸のデータを集計する日農平均価格では、23年の年間取引量が10年前の2・6倍の500万本に拡大、1本当たり71円と3割高で推移する。日持ちの良さに加え、丸葉から繊細な細い葉まで見た目も多様化し、どんな花束にも合わせやすく進化した。
アカシアは価値が急上昇している。黄色い花の付いた枝は「ミモザ」として3月8日の「国際女性デー」の象徴となり、近年は雑貨のデザインや香料としても多用されて知名度が向上。23年の日農平均価格は1本103円と10年前の2倍、取引量は3倍になった。春の開花期以外でも葉に観賞価値があるため、出荷時期は長くなっている。
涼しげな葉が夏に人気のドウダンツツジは、輸出も好調で、中国では高級ブランドになぞらえて「葉物のエルメス」とも呼ばれる。国内の生花店チェーンの経営者からは「輸出用に取られて、国内向けが減るのではないか」と心配の声が上がるほどだ。
切り花は、周年で同じ姿での安定供給が需要定着の鍵とされてきたが、枝物は花付き、実付き、紅葉など野山の季節の移ろいが価値となっている。出回り期間が短くても、旬の姿を強く印象付ける存在感が店頭で受けている。
栽培上の利点も多い。枝物は露地栽培が中心で、資材高に悩む農家にとって、施設や燃料代などがかからないことは魅力だ。畑での収穫適期も長いので労力が分散でき複合経営で導入しやすい。低投資で持続的な生産と消費がかみ合う好循環を定着させよう。
課題は種苗の供給が追い付かないことだ。ユーカリ産地・愛媛県のJAえひめ中央では松山市が特許を持つ挿し木技術を活用し、JA育苗センターで苗木を生産している。
生産者は部会単位で供給力と品質を高め、行政やJAは種苗の増殖など供給段階から後押ししてほしい。徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」のように、「枝物ビジネス」の伸びしろに期待したい。