[論説]縮小する野菜生産 機械化へ技術支援急げ
日本農業新聞が、農水省の統計を基に、22年産までの野菜作付面積の推移を調べた。国民生活に欠かせない重要な野菜で農水省が定める「指定野菜」14品目と、指定野菜に次いで重要な「特定野菜」(シイタケを除く)34品目の合計48品目を対象とした。
指定野菜で、22年産の作付面積が過去最小となったのが9品目。ピーク時と比べ、作付面積の減少率で最も大きかったのはサトイモで、70%減と大幅に減った。次いでナスの68%減、キュウリとハクサイが65%減、ダイコン63%減など。特定野菜は、サツマイモやスイカなど23品目で作付面積が過去最小だった。
収穫時の負担が大きい重量野菜にとどまらず、軟弱野菜や果菜類でも作付面積が減っている。理由は多くの作業で機械化が遅れていることだ。多くの産地が外国人技能実習生に頼っている状況で、縮小に歯止めをかけるには各産地でばらつきがある栽培体系を統一し、機械化につなげる必要がある。
一方、22年産の作付面積が過去最大だったのは、特定野菜のブロッコリーとニンニク。ブロッコリーは、冷凍にも向き、調理が簡便で栄養価も高い。弁当用に買う消費者の支持を獲得し、スーパーも売り込みを強め、農家も安定収入が見込めるとあって“三方良し”で市場を開拓する。
ニンニクも、疲労回復など健康志向の高まりに加えて、コロナ禍の巣ごもり需要で、臭いを気にせずに楽しむ動きが広がった。簡便性のある「チューブにんにく」の人気も高い。産地も多様化し、主力の青森県だけでなく、北海道でも産地化が進み、加工食品や飲食店で扱いやすい冷凍むきニンニクも登場した。生産を増やすだけでなく、需要が伸びる業務・加工用に対応したのが奏功した。
新規就農者のうち、農地や資金を独自調達し、農業を始めた新規参入者の約半数は、露地・施設野菜に参入している。新規参入者は野菜生産に魅力を感じている。新規参入者が定着し、既存農家の生産性を向上させるには、種まきから収穫、調製・出荷作業までの機械化が欠かせない。
主要野菜の機械化について、農水省は「特に収穫、調製・出荷作業の機械化が進んでいない」とみる。機械化が進まなかった要因を分析し、同省は野菜生産の維持拡大へ技術支援を急ぐべきだ。