[論説]臨時国会の与野党論戦 農家の「手取り増」必ず
政府はこれまで能登半島地震・豪雨からの復旧を予備費で対応してきたが、仮設住宅の建設や道路、水道などのインフラ復旧が不十分だ。補正予算で総合的な対策を行い、住民が能登で安心して暮らせる道筋を示してほしい。
農林水産予算については、食料安保の確立を掲げた改正食料・農業・農村基本法の施行を受けた初の補正予算案、来年度予算案の編成となる。来春には基本法の理念を具体化させる食料・農業・農村基本計画の見直しが控える。
産業政策と中山間地域などを含めた地域政策は、農政の両輪だ。だが安倍政権以降、集約化や規模拡大、構造改革に偏った政策が続いてきた。
農水省が食料・農業・農村審議会企画部会で示した試算によると、30年には経営体は20年に比べ半減し、耕作面積も同35%減る。国民の食を支える農業の担い手、農地の確保は危機的な状況にある。移住者などの「多様な農業者」を確保するには、地域政策にもっと目配りをする必要がある。農政の基本方針から徹底した議論を期待したい。
自民党の森山裕幹事長は22日に開かれたJAグループ基本農政確立全国大会で、「全般的に直接支払いの検討を進めなければならない」と述べた。これに対し、キャスチングボートを握る国民民主党の玉木雄一郎代表は、食料安全保障基礎払いを「何らかの形で実現したい」とし、既存の直接支払制度を含め「食料安保を確保するという観点から再整理していくことが必要」との認識を示した。
立憲民主党などの野党も直接支払制度への転換を打ち出している。与野党の考えには隔たりがあるとみられるが、農家所得を下支えする直接支払制度導入は待ったなしだ。党派を超えて英知を結集し、着地点を見いだしてほしい。
直接支払いの在り方を含めて、農家の所得増を実現するには農林水産関係予算の増額が前提となる。改正基本法元年にふさわしい予算を確保し、持続可能な農業へ転換する時だ。農村が活気づく農政を今こそ実現してほしい。
「政治とカネ」の問題を受けた政治資金規正法の再改正なども、政治への信頼回復の第一歩となる。各党の主張には隔たりがあるが、必要な法整備を年内に行うべきだ。
石破政権が重視する地方創生は、足元の農業・農村の振興から始まる。