[論説]スマート農業技術 条件不利地の普及急げ
同法は、農業の持続的な発展を理念に掲げた改正食料・農業・農村基本法の関連法の一つ。スマート農業の促進に向けて「農業現場への普及」と「技術の開発・供給」の両面から支援する。
農業現場への普及は、ドローンや自動収穫機などのスマート農業技術の導入に合わせて栽培方法を見直す「生産方式革新実施計画」を作った農家やJAを認定し、税制や融資などで支援する。
スマート農業技術の活用促進に向けた動きは活発だ。農水省は、農業者やJA、民間企業、研究機関、関係府省など多様な関係者が参画する「スマート農業イノベーション推進会議」の準備会合を9月末に開催。生産と開発の連携、情報の収集・発信・共有、関係者間のマッチング支援などを行う。
また、同省は2025年度予算の概算要求で「スマート農業技術活用促進総合対策」で約70億円、今国会で審議中の24年度補正予算案でも「スマート農業技術開発・供給加速化緊急総合対策」として約54億円を計上した。
その積極姿勢は理解できるが、技術は大規模農家や平地向けだけでなく、中小家族経営や中山間地などの条件不利地に対応した開発に期待したい。条件不利地こそ、高齢化や人手不足が深刻だからだ。 日本農業新聞は、収穫したユズとトラックの積み込み場所を指示する農家の音声を記憶し、自動で行き来する4足歩行ロボットや、リモコン式の自走草刈り機、ひもを引いた角度や長さに応じて人に付いてくる電動追従ロボット台車などを紹介している。こうした“農家の困りごと”といえる多様なニーズに細やかに応える技術開発を強めるべきだ。
政府は30年度までにスマート農業技術の活用割合を50%以上に高める目標を掲げる。スマート農業技術の機能がある機械は、高額になりやすい側面がある。初期投資を抑え、導入や活用がしやすく、「機械化貧乏」にならないようコストと安全性を意識した開発を進めるべきだ。
スマート農業に詳しい北海道大学の野口伸農学研究院長は、施策効果の拡大には「農村地域の無線通信インフラ、スマート農業に適した農地整備、そして農業者のリテラシー(知識や技術を活用する力)向上が不可欠」と指摘する。ハード、ソフト面での支援が求められている。