[論説]水田政策の見直し どこに行った 飼料用米
1月末に同省が示した水田活用の直接支払交付金(水活)の見直しで、交付対象として5年に1度の水張りを条件としない方針としたことは一定に評価できる。
ただ、懸念すべきは、飼料用米中心の生産を見直すと言及した点だ。日本の飼料自給率は23年度が推定27%。同省は30年度までに、これを34%に引き上げる目標を掲げる。このうち牛に必要な粗飼料は自給率を80%から100%、主に豚や鶏に与える濃厚飼料は13%を15%にする計画だ。
同省が、見直しの中で盛り込んだ青刈りトウモロコシや牧草は粗飼料で、飼料用米のような濃厚飼料ではない。今後、濃厚飼料の自給率引き上げを、どのように進めるのか、はなはだ疑問である。
稲の飼料化は、水田と酪農、肉牛を結び付けるだけでなく、子実を濃厚飼料に利用することで、耕種農業との縁が薄かった養豚や養鶏業を、地域とつなぐ役割を果たしてきた。貴重な国産濃厚飼料を活用し地域内循環につながるとして、生協や飼料会社がアピールしてきた側面もある。
畜産経営体や飼料会社は飼料用米の利用に向け、設備を整え、受け入れ体制を固めてきた。生産された豚肉や鶏卵は、国産飼料で育てた畜産物として、消費者からも支持を得てきた。こうした蓄積が無になるのではと懸念する。
伏線はあった。昨年12月の食料・農業・農村政策審議会企画部会で同省が示した基本計画の骨子案でも、飼料用米への言及がなかった。「米」の項目では主食用と米粉用だけで方向性を示し、「飼料」の項目では青刈りトウモロコシや牧草などの方向性を示したが、飼料用米はなかった。委員からは「飼料用米の生産・利用拡大をする必要がある」との意見は出たが、1月に示された骨子案でも「飼料用米」は復活しなかった。
米不足といわれる中、24年産米の検査数量は玄米が前年同期比で98%を維持した一方、飼料用米は68%と激減している。主食の危機に、飼料用米が需給の緩衝機能を果たしているとの推察もできる。
長期的に見れば主食用米の生産力は落ちる。米の逼迫(ひっぱく)に備え、主食生産を補える飼料用米の潜在能力は大きく、政策で明確に位置付ける必要がある。短期で方針が変われば、これまでの設備投資や生産体制の整備はなんだったのか、問いたい。