[論説]2025年の確定申告 定額減税 対応怠りなく
農業経営は飼料や肥料、資材、燃油高が長期化する一方、農畜産物価格への十分な転嫁が進まず、厳しい状況が続いている。世界では紛争や温暖化に伴う気象災害が相次ぎ、資材や穀物高騰は収まる気配がない。持続可能な農業経営に向けて確定申告で課題を洗い出し、所得の確保を進める必要がある。
例えば、事前に税務署に申請し承認を得る「青色申告」をすれば、収入保険に加入できる。全ての農産物が対象となり、自然災害や価格低下だけでなく、農業者の経営努力だけでは避けられない収入の減少も補填(ほてん)される。保険期間の農業収入が、経営ごとに定める基準収入の9割を下回った時に、下回った額の9割を上限に補填する。保険料には50%、積み立て部分には75%の国庫補助がある。
ただ、保険に加入できるのは、少なくとも前年1年分の青色申告の実績がある農業者で、経営を安定させるためにも加入を視野に、青色申告への切り替えも検討したい。政府には、誰一人取り残さない経営対策を要望したい。
農水省は「簡易な青色申告であれば、手間は白色申告とほぼ同じ」としており、挑戦してはどうか。各JAでも青色申告会を中心に、税理士による指導や相談会が開かれている。参加者からは「申告書を作成するのは難しいが、JAは親身に対応してくれて助かる」などの声も寄せられており、困った時はJAに相談してほしい。
今年は定額減税制度への対応も忘れないようにしたい。納税者と扶養親族各1人につき所得税3万円と住民税1万円が減税される制度で、給与所得者は、昨年6月以降の給与と賞与も含め、源泉徴収税額から順次控除されている。
一方、農家などの個人事業主で前年の所得税の納税額が15万円以上の場合は、既に減税処理が行われている。重要なのは、納税額が15万円未満のケースだ。確定申告により所得税を支払うため、申告をしなければ1人3万円の減税を受けられない。申請漏れにならないよう申請用紙や会計ソフトなどを使う際は、定額減税の記入欄がある今年用か、確認して作業を進めたい。
申告期限は3月17日、インボイス(適格請求書)制度課税事業者の消費税申告は3月31日まで。マイナンバーカードとスマホを使った申告もでき、電子申請の利用者も増えそうだ。JAの力を借り、確定申告を乗り切りたい。