[論説]基本計画の意見交換会 現場の声 立案に生かせ
まず指摘したいのは、意見交換会を開催した時期が遅いことだ。政府は年度内の計画策定を目指しているが、年度末まであと1カ月に迫り、既に次期計画の骨子案が示された後での開催となった。
前回2020年の見直しの際は前年の11月から全国10カ所で開いており、それと比べてもかなり遅い。今回は全てオンライン開催で、5日間で計11回という“詰め込み”型となった。現場からの意見を丁寧にくみ上げ、計画に落とし込む時間は限られる。
交換会参加者の意見で目立ったのは、農家の高齢化や担い手減少が進む中、中小規模や兼業農家、女性など多様な担い手を育てる重要性だ。佐賀県基山町で野菜作りやカフェの運営などを手がける増永和子さんは、中山間地域では「小規模農家が多数、残ることでしか農地は守れない」と強調した。富山県立山町で稲作や農泊などを営む坂口創作さんも「大規模農家に政策資源が集中し過ぎている。農村のインフラ維持には、小規模農家を含む多様な担い手の育成が必要だ」と訴えた。
消費者側からも声が上がった。東都生協の風間与司治理事長は「これまで地域を支えてきた家族農業への支援を強化してほしい」と要望。これらの声を考慮すれば、中山間地域を支える小規模農業や、多様な人材の重要性を明確に位置付けるべきだ。
水田政策をはじめとした農政の安定性を問う声も相次いだ。計画の骨子案は「水田政策を2027年度から根本的に見直す」と明記、検討を本格的に始めるとした。北海道江別市の大規模農業法人、輝楽里の藤城正興常務は「(水田政策の変更は)タイミングによって不公平感が生じる恐れがある」と指摘した。JA北海道中央会の樽井功会長も「これまでの制度と一貫性があり、現場が納得できる丁寧な説明を」と要望。農家が不安や不公平感を抱かないような計画の立案が求められる。
懸念されるのは、次期基本計画の目標や指標(KPI)の検討案に、農業者確保についての目標値が明示されていないことだ。「担い手や若い農家の生産意欲につながる、力強いメッセージを明記してほしい」(北海道JAうらほろの林常行組合長)という声もあり、目標を明確にし、具体的な政策を打ち出すべきだ。生産現場に寄り添った計画の策定を求める。