[論説]学校給食米の値上がり 安定供給の仕組み急げ
給食用米の大幅な値上がりは、47都道府県の学校給食会に日本農業新聞が1~3月に行った緊急調査で判明した。
回答したのは9割超に当たる43の学給会で、自治体への米の売り渡し価格の上昇は昨年秋から始まり、25年度当初は1キロ当たり707円~400円とこれまでにない高価格帯となった。最低価格の400円は、24年度当初の最高価格(399円)を上回り、全国の自治体に衝撃を与えた。
文部科学省によると、学校給食は1食当たり平均250円前後と低く抑えられている。学校給食法で食材費に当たる給食費を原則「保護者負担」としているためで、給食の実施主体である自治体が値上げをためらう原因となっている。同法が制定された1954年は、国が米価を管理していた食糧管理法(95年廃止)下の時代で、今回のような米の大幅な価格変動は想定されていなかった。政府からの交付金や補助金で値上がり分を補填する従来の手法は問題を先送りするだけだ。給食無償化を踏まえ、まずは学校給食法を見直すべきだ。
全国の小中学生のうち、給食実施校で学ぶのは96%に当たる約886万人。本紙で試算したところ、全員が給食で米飯を食べるには1日824トンの米が必要となる。米飯を週4回実施するならば、24年度全国主食用米作付面積の1・8%分、週3回では1・3%分が必要となる。
作付け全体で見ればわずかな面積だが、「令和の米騒動」以来、新米の時期までの半年分を確保できない学給会は多い。半数以上で仕入れ先との調整・交渉が長引き、特に米の消費量が生産量を上回る東京や静岡などの消費県では、3月下旬に政府が備蓄米を放出するまで価格決定を待たなければならなかった。
今回の学給米値上がりを受け、全国の調理現場では米飯給食の回数を減らしたり、おかずの食材を安価なものに変えたりする動きが広がる。西日本の栄養教諭は「地場産農産物を使った給食が、価格を理由に使いづらくなっている」と語る。このままでは給食をきっかけにした地産地消や有機農業が後退しかねない。
学給史70年の転換点となる国の無償化は、「ただであれば何でも良い」というのではない。食で子どもの成長を支える安定供給の仕組みを構築し、地域農業の振興につなげる発想が必要だ。