[論説]イネカメムシ対策 地域で防除体制構築を
イネカメムシは斑点米カメムシの一種で近年、発生が増加している。昨年も暖冬の影響で全国的に多発した。農水省による都道府県の聞き取り調査によると、昨年は37都府県でイネカメムシが確認された。吸汁された稲穂は、斑点米や不稔(ふねん)米となり品質劣化につながる。気象庁によると今夏も全国的に猛暑が見込まれており、対策が求められる。
毎年、暑さに悩まされている埼玉県は、昨年11月から3月中旬にかけて、県内の172地点でイネカメムシの越冬した場所と量を把握するため、初の調査に乗り出した。
結果、越冬成虫は約6割の100地点で確認され、広範囲に及んでいた。越冬密度は、落ち葉の中や下で1平方メートル当たり12・4~42・4匹と、雑草地(同3・8匹)に比べて非常に多く、落ち葉の中で冬を越えた個体が多いことが分かった。
対策として重要なのは、他の主要な斑点米カメムシ類と違い、稲穂が出そろった後ではなく、出穂期に早期防除することだ。そのためには水田を注意深く観察し、初発を見逃さないことに加え、①出穂期から穂ぞろい期にかけて②穂ぞろい期から7~10日後――の2回の薬剤散布がポイントだ。
JAなどと連携した無人ヘリコプターやドローンによる広域一斉防除も有効となる。県は2025年度の新規予算にイネカメムシ対策として1488万円を計上。ドローンや無人ヘリを利用した広域防除に取り組む団体などに対し、経費の一部を助成する。
防除の効果を高めるには地域の連携が鍵となる。防除適期がそろうように作付け時期や品種の調整、薬剤を散布する時期やエリアの決定、住民への農薬散布についての確実な周知など、今のうちから体制を整えておきたい。
栃木県も3月から「カメムシ防除作戦」を展開、体制を強化する。県農政部内に「プロジェクトチーム」を設置し、県と関係機関・団体が連携して迅速な情報提供と、発生予測から効果的な防除まで総合的な対策を担う。専用ホームページも開設し、最新情報を提供する。
対策の効果をいかに高めるかが、農家手取りを左右する。イネカメムシの越冬場所からの飛来は7月上旬から始まる。それまでに地域の体制を整え、対策を徹底しよう。