原油高騰下の園芸 基本技術徹底で節油を
原油価格の代表的な指標であるニューヨーク商業取引所の米国産標準油種WTIの清算値は1バレル(159リットル)83ドルほどで、2014年10月以来7年ぶりの高値水準にある。
要因は、新型コロナウイルス感染拡大から世界経済が回復し需要が高まったことに加え、今年初頭の厳冬で燃料在庫が減少、また、石油輸出国機構(OPEC)などが減産を続けることを決定したことなど複合的だ。すぐの値下がりは見込みにくい。
農水省のまとめでは、暖房機に用いるA重油の価格は今年8月、200リットル当たり1万9190円となり、15年を100としたときの指数は117・4。燃油価格が経営に与える影響が大きい施設園芸では、このまま加温期を迎えれば生産コストの増大は避けられない。同省の営農類型別統計情報(18年)などによると、施設園芸の農業経営費に占める光熱動力費の割合は、ピーマンが24%、トマトが16%、バラが35%などと高い。
加温期を直前に控え、少しでも燃油を減らすために今できる対策を徹底しよう。農水省の施設園芸省エネルギー生産管理マニュアルやチェックシートを活用したい。
暖房機のメンテナンスでは燃焼室やバーナーノズルにたまった燃焼かすを取り除く。熱効率を高めたり、不完全燃焼を防いだりして重油の無駄を減らせる。温室の保温性向上では外張りフィルムの洗浄、フィルムの破れや隙間の点検、使用しない出入り口の目張りなどで熱を逃がさないようにする。送風ダクトや循環扇の設置方法も点検する。
技術改善では、作物の生理機能に合わせて時間ごとに温度を変える管理方法も重油の節約になる。多段サーモ装置には、後付けできるものもある。保温フィルム、布団資材、太陽光を蓄熱し夜間に放熱する蓄熱資材なども普及している。また電力で稼働するヒートポンプは導入に投資が必要になるが、重油よりも価格変動が少ない電気を使うため経営の安定にもつながる。
異常高温や豪雨災害など地球温暖化の影響は国内外で生じ、脱炭素社会への動きが農業でも世界的に加速。日本では農水省が「みどりの食料システム戦略」を策定し、50年までに①農林水産業のCO2排出量実質ゼロ化②化石燃料を使わない園芸施設への移行──といった目標を定めた。中長期の観点からも燃油削減の取り組みが求められる。