ハラスメント対策 介護職への理解醸成を
介護従事者の労働組合、UAゼンセン日本介護クラフトユニオンが組合員を対象に2018年に実施したアンケートでは、利用者・家族から何らかのハラスメントを受けた人は74%。ハラスメントをするのは一部の心ない人たちだが、労働環境が厳しい現状では人材不足の解消は難しい。
ハラスメントはなぜ起こるのか。城西国際大学の篠崎良勝准教授は「体が不自由なためにストレスを抱えた介護利用者が、はけ口として暴力や暴言などに及ぶケースが考えられる」と指摘する。ハラスメントをしているとの認識も不足しているという。
一方、介護従事者には「ハラスメントを受けたとの認識がない人もいる。利用者は社会的弱者だけに、受けても訴えにくい」と篠崎准教授。何がハラスメントかを知り、不必要な体への接触や暴言などがあれば「許したり、笑って済ませたりせずに、利用者に伝える必要がある」と話す。
対策を強化した介護事業者もある。利用者・家族が暴力や乱暴な言動、体を触るといったセクハラなどをした場合、契約を解除すると契約書に明記。また職員がペアとなり、日常的な指導や定期的な面談を通じていつでも相談できる職場環境をつくり、一人で悩みを抱え込まないようにする。そういった取り組みだ。
厚労省も本年度から、全ての介護事業者にハラスメント対策の強化を求めている。
介護サービスへの国民理解の拡大も重要だ。4~17日の福祉人材確保重点実施期間中には、各地で都道府県がイベントを展開。香川県は毎年、KAGAWA介護王座決定戦と銘打ち、3人一組で入浴、排せつ、食事それぞれの介助技術を競う。県民に技術を見せ①職業として介護職に興味を持ってもらう②介護職への理解が深まることで離職率が下がる──ことを期待する。
高齢者の増加で介護従事者はますます必要になる。厚労省によると、19年度の介護職員数は210万6000人。介護人材は23年度には約233万人、25年には約243万人、40年には約280万人が、それぞれ必要と見込む。
政府の「新しい資本主義実現会議」は緊急提言で、介護などの現場で働く人の収入を増やしていく方針を示した。介護人材の確保・定着には、待遇改善と併せて、ハラスメント対策の強化を含め労働環境の改善も必要である。政府の取り組みが求められる。