キャベツとはこんなに重い野菜だったか――。7月上旬、記者は同社が受託する大分県竹田市でのキャベツ収穫に参加した。1日に10人で9トンものキャベツを収穫。包丁で切る班と、プラスチック製コンテナに詰める班に分かれ、記者はまず詰める仕事を任された。
1個2キロ弱のキャベツを1ケース15キロになるよう詰める。コンテナ含めて約17・5キロ。不安定な畝の凸凹と収穫残さの上で踏ん張り、重量計に載せるだけで全身の筋肉がきしむ。全600ケースのゴールは遠く、眼鏡を伝う汗を拭く余裕もない。
若者や主婦活躍
いっぱいになったコンテナは運搬車で畑の外へと運び出し、トラックで選果場へ。人員配置など現場をてきぱきと指示するのはアルバイトリーダーの足立真悟さん(27)だ。作業委託元の農家は現場に顔を見せず、同社ではアルバイトが指揮することが多い。
休憩時間に話を聞くと、足立さんは同社で働いて4年目。もともと調理師で、短期間だけ働くつもりだったが、農業の楽しさに目覚め、独立を考えるまでになった。
続いて、キャベツを切る作業に取りかかる。収穫包丁で株から切り離し、余計な葉を落として、切り口を整える。中腰となり、腰の負担が大きい作業だ。
横を見ると、60代の女性がすごい早さで次々と切っていく。大分市内在住の主婦で、同社で働いて7年目。この仕事の良さは「年齢制限がないところ」と話す。子どもが独立して50代で働こうと思ったが、年齢が壁で同社以外見つからなかった。「仕事のきつさは1週間で慣れた」と笑う。
働きやすさ重要
同社では約230人がアルバイト登録し、年間延べ1万8000人が働く。なぜこれほどの人が農業に集まるのか。同社と協力して労働力支援事業に取り組み、作業委託の窓口となるJA全農おおいたを訪ねた。
営農対策課の久恒利通調査役は「人手不足は農業に限らない。働き手の価値が上がっていて、来てもらうには働く環境の整備が重要」と指摘する。
久恒さんによると、農業は労働力を必要とする期間が限られるため、働き口として安定しないのが課題だ。同社は県内以外に福岡、熊本、宮崎まで仕事を広げ、いつでも仕事がある状態を実現する。主婦や学生なども働きやすいよう大分市内から現場まで車で送迎。農作業未経験者でも可能で、1日から参加できる現金日払い制とする。
農家にとっては必要な時期にいつでも人を確保できることがメリットだ。委託料は保険料などを含み安くはないが、毎年依頼するリピーターが多いという。
久恒さんは、かつて農村では農家以外の主婦などが農繁期に加勢し、農業を支えていたと指摘。「彼らが高齢化でリタイアする中、代替するのが短期雇用」と歴史的な役割を強調する。
取材後記
「農業は土地に根差した農家が営むもの」という固定観念があり、実際に見るまで短期雇用が主体の農業現場をイメージできなかったが、現場では皆、生き生きと働いているのが印象的だった。農業の新しい戦力として期待できる。
体力などでは大変な面もあり、仕事が合わずに一度働いたらもう来ない人もいるという。だが、同社で1年近く働く沖縄県出身の男性(38)は「精神的ストレスがなく、自然の中で汗をかくのが最高だ」と話していた。
確かに仕事を終えてあぜで休憩すると、真っ青な空とキャベツ畑の緑が目にまぶしく、汗でぬれたシャツに風が心地良い。農業の魅力を存分に味わえる。なお記者は、翌日筋肉痛で歩行も困難になったと付記しておく。