生成AIは、学習データを基に、文章や画像、音声などを新たに生み出すことができる人工知能。対話型はチャットGPTの他、「新しいBing(ビーイング)」や「Bard(バード)」などがある。
優秀なコンサル
鶴さんは自社の経営ビジョンづくりに活用した。どのような経営を目指しているのかや自らの経歴、現状の販売状況などを入力した。対話を繰り返す中で「経営ビジョンができて、そのために今やるべきことのスケジュールもできた」と話す。
取材では鶴さんに農業経営のアドバイスをもらうための最初の質問の簡単な記入例を作ってもらった。鶴さんは「鬼のように厳しい農業経営コンサルタント」や「目標達成を第一に指導します」と入力。経営状況の他、「その他」の項目に重視することを盛り込んだ。
鶴さんは、経営ビジョンの実現のため、雑草と農作物を識別できるAIソフトを自作した。プログラム言語や理数系の専門知識はほぼ無かったが、チャットGPTを教師に勉強。自動で雑草を識別し、レーザーで焼く除草機の開発を目指している。
鶴さんはチャットGPTを「超優秀なコンサルタント、指導員、あらゆる専門家が自分の経営に参画している状態」と表現し、「使わないのがもったいない」と話す。
数分で複数画像
今年2月から画像生成AIの一つ「ミッドジャーニー」を試しに使い始めた。本格的に使ってみようと、5月から100日間、キュウリを擬人化したキャラクターを毎日作り続けた。
取材中にもキャラクターを作ってもらった。「キュウリ」や「サムライ」など反映させたいものの他、「アニメスタイル」や「ベストクオリティー」など画風や質を英語で入力すると、数分で複数の画像ができた。
羽佐田さんはSNSに投稿した100キャラクターのうち一つを、今シーズンの農園のキャラクターに選んだ。直販での活用を想定する。
農園のロゴを外注したこともあった羽佐田さん。「キャラクター以外にも文字デザインなども作れる。自分でできることが広がる」と利用を薦める。
羽佐田さんが所属するJA西三河きゅうり部会では、チャットGPTが示したレシピで調理。SNSに投稿して活用を模索している。
<取材後記>
ちょっとした疑問を調べるためチャットGPTを使う機会があったものの、いまひとつの答えが多く、仕事には使いにくいと感じていた。そんな疑問を鶴さんに投げかけると、有料版を使うことを踏まえ、「部下を育てるようにチャットGPTと対話することがこつ」と返ってきた。前提情報や指示を細かくすることが重要だと言い、使い手次第で活用の幅が広がると感じた。
取材した農家2人とも、生成AIを使うことで、自分でできることを増やしていた。どんな活用方法ができるか、農家やJAの動きに注目していきたい。
(木村薫)