西日本で少雨傾向が続き、ミカン産地に影響を与えている。味が凝縮されて高糖度に仕上がるも果実の肥大が進みにくく小玉果が目立つ上、特に雨が少ない愛媛県の複数産地は、樹体への乾燥ストレスが来年産にも尾を引くことを懸念。収穫シーズン中だが、異例の秋かん水に踏み切るなどの対応に追われている。
瀬戸内海に浮かぶ離島、松山市の興居島。ミカン園地の所々に、乾燥によって皮が裂けた実や3Sの小玉が目につく。
「今年は秋以降、雨がほとんど降っていない。収穫期にこれだけ乾燥したことはない」
島内で、かんきつ2・4ヘクタールを栽培する田中裕二さん(50)はそう話す。「小玉が多いと収量が伸びない」と打ち明ける。さらに「木に例年以上のストレスがかかり、来年の生産が大丈夫か心配」と不安をにじませる。
例年、収穫期の11月に、ミカン園地でかん水用のスプリンクラーを稼働させることはない。ただ、今年は「もうそのままにしておけない状況」(田中さん)だとして、異例のかん水に踏み切った。
JA松山市は「来年以降の生育を考えると、今の乾燥状態は放置できない」(指導課)として、管内のミカン農家に、収穫が終わっていない園地であっても、液肥散布やかん水を呼びかけている。
愛媛県内のミカン産地を抱える複数JAの営農指導担当は、少雨で味が凝縮され、例年以上に高糖度に仕上がっているが、小玉傾向で農家の収量は減っている、と口を揃える。
さらに懸念されているのが来年産への影響だ。愛媛県は「来年のミカン生産は裏年に当たる。このままでは樹勢が大きく低下し、『超裏年』になる恐れもある」(農産園芸課)とみる。激しく乾燥している場所などは、収穫終了を待たずに液肥散布やかん水をするよう指導している。
JAにしうわ、JAえひめ南は、管内で乾燥によって葉が巻くなどの状態が目立っていることを受け、今月上旬まで異例の秋かん水を推進。11月上旬に一定量の雨が降り、現在はかん水を終えているが、依然心配されるとして、収穫後の液肥散布を呼びかけている。
●和歌山
和歌山県も今シーズンは少雨で推移しており、県庁によると、極早生が小玉傾向で高糖度だったという。樹体への乾燥ストレスが来年以降の生育にどこまで影響を与えるかは「今後注視する必要がある」(果樹園芸課)としている。
県果樹試験場(有田川町)によると、場内で栽培する極早生「ゆら早生」「日南1号」は前年よりサイズが小さくなっており「雨の少なさが影響している」(栽培部)とみる。
県は今後、早生以降の肥大傾向なども精査しながら、来年産に向けた管理のポイントを検討していく方針。
乾燥し過ぎるのを避けるため定期的なかん水に加え、樹勢低下が懸念される場合は、今年産の収穫が終わった後の施肥やその後の葉面散布などを想定している。
松山市は平年の25% 西日本で降水量大幅減 8~10月
ミカン主要産地の8~10月の降水量を見ると、平年を下回る地点が多い。10月の西日本の降水量は、低気圧の影響を受けにくく、日本海側はかなり少なく、太平洋側も少なく推移し、松山市は過去最少を更新した。
農水省によると、ミカン収穫量の上位5県は和歌山、愛媛、静岡、熊本、長崎。これら5県に気象庁が設けている観測地点の8~10月の合計降水量は、複数の地点で平年値を下回っている。
特に減少が目立ったのが松山市の91・5ミリで、平年の25%。同市は10月の降水量も7・5ミリで、1890年の調査開始以来、最少を記録。これまでの14・6ミリ(1932年)の半分近くにまで落ち込んでいる。
この他、和歌山市は8~10月の降水量が253・5ミリで平年の57%、熊本県岱明(玉名市)も149・5ミリで同35%にとどまった。