大阪市の証券街で知られる中央区北浜で朝、女性を中心に若者で行列をなすカフェがある。彼らの目当ては、カップに山盛り入ったイチゴに溶かしたチョコレートがかかった「チョコベリー」だ。
果実の小売りなどを手がけるハナフルが運営するカフェ「ノースショア」が、市内の2店舗で2月上旬からテイクアウトで限定販売する。北浜店では、用意した250個が正午には売り切れる日もあるという。
「1300円」でも行列
高校時代の同級生4人と来店した、兵庫県丹波篠山市の大学生、中西穂乃香さん(21)は「イチゴが好きで、インスタグラムで見て知った。1時間半かけて来たけど満足」と話し、友人のカップと乾杯するように写真を撮ってからイチゴを頬張った。
英国・ロンドンなどでイチゴに溶かしたチョコをかけたスイーツが流行しているのを同社が知り、取り入れた。イチゴの品種に応じて、チョコの味も変えているという。
品種にこだわり
品種は、赤色は奈良県産の「古都華」、徳島県産の「さくらももいちご」、福岡県産の「あまおう」など。白色は奈良県産の「パールホワイト」「真珠姫」「淡雪」で赤、白ともに主に同県産が多い。
同社が、スイーツに品種や産地を前面に出すことで、生果のパック売りの購買にもつなげようと青果卸の大阪中央青果に依頼し、JAならけんが出荷に協力する。
ハナフルの中谷龍二バイヤーは「知名度に関係なく、品種ごとの味わいを楽しむ流れを作り、果実全体の消費の底上げにつなげたい」と意気込む。
客呼ぶ「古都華」
「道の駅大和路へぐり くまがしステーション」のレストラン「hanana」は、「古都華パフェ」(2480円)を19年から販売。1月中旬から4月上旬までの1日40食限定で、2週間先の予約はすぐに埋まってしまう。
生果販売も伸び
道の駅の中山悟所長は「22年度の道の駅で、イチゴの売り上げが20年度比で2・3倍に伸びた。写真映えするパフェが奏功している」と話す。
<取材後記>
「若者の果実離れ」といえど、売り方を工夫すれば果実へのニーズは潜在的にある。「チョコベリー」は1カップ1300円でも完売必至だが、イチゴ1パックが同様の値段では、消費者は買いづらいだろう。しかし、カフェで飲み物やスイーツをセットで頼むと、同等の価格になってしまう。「素材にこだわったテイクアウトできるスイーツ」だと思えば、従来なかったジャンルだ。
簡便なものが受けるのと同時に、若い世代はモノだけでなく体験なども求める「コト消費」の傾向が強い。食べ物なら、その場所に行かないと買えないものを食べた。また、食べたことを友人やSNS上でつながる人と共有できたことに充実感を得ている。
こうした人に果実を選んでもらうには、品種自体の希少性だけでなく、見映えを意識した売り方も必要だ。ここに国産果実復権のヒントがあるだろう。