“平和ラベル”反響 東北の酒蔵
山形県鶴岡市の蔵元・奥羽自慢は、リンゴを使った果実酒を12日から限定販売する。秋田県横手市の酒蔵・大納川は、日本酒の独自商品を販売。ともにウクライナ国旗にちなみ青と黄を配したラベルのデザインだ。
奥羽自慢の「HOCCAシードル ウクライナ支援ver」は、山形県産リンゴ「ふじ」「紅玉」をブレンド。ラベルには青と黄のリボンを配し、平和への祈りを込め「PRAY FOR UKRAINE」と記した。
「3人の子を持つ父としていたたまれなかった」。醸造責任者の阿部龍弥さん(30)は連日、ウクライナの痛ましい報道に心を痛めた。特に、戦場で逃げ惑う子どもたちを見て「何か支援できないか」と思案。たどり着いた答えが、自社製品の売り上げを募金にあてることだった。
味はドライとスイートの2種類。限定1000本を販売する。価格は1650円(750ミリリットル)。酒税や送料の諸経費を除く売り上げの全額をユニセフに寄付する。
阿部さんは「紛争で避難を余儀なくされたウクライナに住む子どもたちに役立て、当たり前の日常を取り戻すための一助にしたい」と力を込める。
大納川の「純米吟醸 PEACE ウクライナボトル」は、瓶に貼られた青と黄の「戦争反対」「PEACE UKRAINE」のラベルが目立つ。秋田県産酒造好適米「秋田酒こまち」を使った。
商品化は、「何か支援したい」と切望する田中文悟社長の発案だ。急きょ専属デザイナーにラベルのデザインを発注。発案から1週間で販売にこぎ着けた。
反響は大きく、発売1週間で約1000本を売り上げ、新たに1500本を追加生産する計画だ。
営業本部の石川康生さん(37)は「ウクライナを応援したい消費者の強い思いの証しでは」と分析する。
価格は2200円(720ミリリットル)。1本につき200円を在日ウクライナ大使館に寄付する。
現地産蜂蜜すぐ完売
1930年創業の老舗蜂蜜専門店「金市商店」(京都市)は、ウクライナ産蜂蜜の販売を通じた支援活動に乗り出した。経費を除いた全額を京都市を通じて寄付し、キーウ市の復興に役立ててもらう考えだ。
日本人に人気が高い百花蜜140グラム入りの瓶を、756円で販売。当初200個製造したが3月16日の発売から2日後に売り切れた。800個を追加製造したが、これらも月内に完売したという。
現在ウクライナ産の入手を試みているが、社長の市川拓三郎さん(38)によると現地工場がロシアの侵攻で稼働できないという。市川さんは「ウクライナは世界的にも良質な蜂蜜産地。日本への輸出量も増えていた。一日も早く平和が戻ってほしい」と願う。
「ひまわり」上映、音楽会も
文化を通じた支援も広がっている。1970年に旧ソ連ウクライナ共和国で撮影された名作映画「ひまわり」の再上映が全国で始まった。千葉市を皮切りに、北海道から沖縄まで上映場所は90カ所を超え、さらに増える見込みだ。興行収入の一部を日本赤十字社に寄付し、支援に充てる。
配給会社「アンプラグド」(東京)によると、第2次世界大戦の悲劇を描いた本作の撮影場所は、キーウ南500キロのヘルソン州。主人公が広大なヒマワリ畑の前で「イタリア兵やロシア兵が埋まっている。無数の農民、老人、女性、子どもも」と語る場面がある。
同社の池田祐里枝さん(34)は当初、現在の戦争と映画を重ねることをためらった。しかしツイッターで映画のことを発信すると反響が拡大。池田さんは「受け取ってくれるものがあるのでは」と、再上映に踏み切った。
51年前にキーウ市と姉妹都市になった京都市の市交響楽団は10日、京都コンサートホールで開く定期コンサートの前に無料チャリティーコンサートを開く。キーウ市への寄付を呼び掛ける。
チャリティーコンサートは、楽団員の有志3組が、ロビーで計15分間演奏する。会場にキーウ市の写真や友好都市提携のいきさつなどを記したパネルを展示する予定だ。担当者は「今後もコンサートを通じて支援の輪を広げたい」と語る。