竹抽出液「肌に優しく、消毒効果」 来月にも商品化、放棄林減少に期待 森林総研が研究
竹は成長が早く放置すると、土砂崩れの恐れや隣接農地に地下茎を伸ばして耕作を妨げるなど、農業への影響も懸念される。竹林の適切な管理に向け同研究所は、竹由来の抽出液に含まれる抗菌成分に着目。2013年から研究を進めてきた。
抽出には、同研究所などが開発した「減圧式マイクロ波抽出装置」を使う。粉砕した竹を袋に入れ、60度で沸騰するような減圧状態で、マイクロ波を当てて1時間加熱する。電子レンジで加熱する仕組みとほぼ同じだ。
蒸発した水分を蒸留してできた抽出液が消毒液となる。特にモウソウチクの稈(かん)には、抗菌物質が含まれ竹50キロ当たり10リットルの抽出液が取れる。残さは消臭機能のある建材や飼料・土壌改良材にもなる。
研究で竹抽出液は大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿(りょくのう)菌、インフルエンザウイルスに対して、市販の消毒用エタノールと同等の消毒作用があると分かった。
さらに竹抽出液は皮膚の炎症を抑える。アルコールでかぶれやすい人や子どもも気兼ねなく使える。大平辰朗研究ディレクターは「竹抽出液にはコロナウイルスにもある『エンベロープ』というウイルスが持つ膜を壊して不活化させる効果がある」と説明する。
自然由来の消毒液として、竹製品を扱うエシカルバンブー(山口県)が蒸留装置を導入し、5月にも市販化を目指す。雑貨店や航空会社、児童福祉施設などから問い合わせが既にある。県内の竹を使い1本(100ミリリットル)2000円前後で販売する。
大平ディレクターは「抗菌材として高付加価値な商品を地方で生産できれば竹林が『宝の山』になる日も近い」と期待を寄せる。