北海道別海町のJA中春別は、酪農家が牛の乳頭を拭く際に使うタオルについて、洗濯方法による汚れ落ちの違いを検証した。洗濯機や洗剤の種類など条件を変え調べた結果、二層式洗濯機ではすすぎの回数に関わらず汚れがしっかりと落ちる傾向が出た。十分に汚れが落ちていないタオルを使うと乳房炎の発生リスクも高まるとして、結果を参考に洗い方の見直しを呼びかける。
同JAの職員が管内の牧場を回る中で、農家によってタオルの保管状態や使う洗濯機が違うことに気づき、汚れ落ちにどれだけ差があるか疑問を持った。
検証では、アデノシン三リン酸(ATP)を用いて微生物の汚染度を測定できるATP検査キットを活用。(1)全自動洗濯機か二層式洗濯機か(2)市販の洗濯洗剤(液体)か酪農用の漂白洗剤(粉末)か(3)すすぎ回数--など計28パターンで洗濯を行い、脱水後にタオルの微生物の総数を検査した。同時に培養検査も実施した。
検査の結果、二層式洗濯機で洗ったタオルは、洗剤の種類やすすぎ回数に関わらず洗濯直後のATP検査の数値が低い傾向だった。全自動洗濯機では、洗剤を使わず注水すすぎするだけでは十分に汚れを落とせていないことも明確になった。使用洗剤の比較では、酪農用漂白洗剤の有効性が確認できた。
農家が早朝の搾乳後にタオルを洗濯し、夕方の搾乳時に再び使うケースも多いとみて、洗濯から10時間経過後の汚れ具合の変化も調査。二層式洗濯機を使い、かつ酪農用漂白洗剤で洗ったタオルは、10時間後も菌が繁殖しづらいことを確認した一方、全自動洗濯機で洗ったものは菌が繁殖しやすい傾向だった。
一部のタオルはガス乾燥機で20分間乾燥させてから検査したが、乾燥機の有無で菌の繁殖具合に明確な違いが出ると結論付けるのは難しかったという。
同JAは、衛生的なタオルで乳頭口の汚れを落とすことが乳房炎のリスクを下げ、生乳生産量の向上にもつながると強調。「洗う前のタオルの汚れの程度によっても変わってくるので、検証結果は参考程度として欲しい」(生乳課)としつつ、「ちょっとした意識の変化につながれば」と話す。
(松村直明)