
2023年産米の食味ランキングの結果を、同じく記録的な猛暑だった10年産と比較してみた。最高位の「特A」を獲得した産地品種数は、東海地方を含む西日本が28と全体の7割近くを占め、10年産と比べて約5倍に伸ばした。異常気象が頻発する中でも良食味米の生産を進めるために、高温耐性品種の導入を広げてきた産地の戦略が見えてくる。
食味ランキングでは、米の味を「特A」「A」「A´」「B」「B´」の5段階で格付けする。良食味米の作付け推進と米消費拡大に役立てる狙いで、日本穀物検定協会が1971年産から始めた。複数産地の「コシヒカリ」のブレンド米を基準に外観、香り、味、粘り、硬さ、総合評価の6項目で評価する。
23年産の食味ランキングの対象となったのは144産地品種で、特Aに格付けされたのは43だった。23年産と同様に生育期が猛暑に見舞われた10年産の特A数は20で、獲得数が倍増している。
「にこまる」など作付けが拡大
特Aの数を大きく伸ばしているのが、西日本の産地だ。東海地方を含む西日本の産地が10年産で獲得した特A数は6だったが、23年産では28まで伸ばした。一方、東日本は、10年産が14、23年産が15と伸びは小幅になる。
西日本産地が躍進する背景には、高温耐性品種の導入がある。10年産では作付けが一部に限られていた「にこまる」「きぬむすめ」「つや姫」が東海、中国、九州を中心に拡大。「恋の予感」など、猛暑対応で新たに開発された品種もある。西日本が23年産米で獲得した特Aのうち猛暑に対応する品種は18で、64%を占めている。
例えば、静岡県は23年産で「にこまる」「きぬむすめ」の計3で特Aを獲得した。いずれも11年以降に県が奨励している品種だ。「良食味かつ多収で、猛暑の影響を受けにくい品種の普及に努めてきた」(静岡県農芸振興課)ことが高評価につながった。
猛暑が頻発 東日本産でも
夏の猛暑が頻発する中、近年は東日本の産地でも高温耐性品種の導入が進む。23年産で初めて特Aを獲得した青森「はれわたり」や秋田「サキホコレ」といった新品種も高温耐性を備えている。昨夏の猛暑を機に、暑さに強い品種への切り替えを加速させる産地も出てきた。
23年産米の全国的な品質低下を受けて、「数量、品質の安定が見込める高温耐性品種を求める業者が増えている」(大手米卸)。異常気象に対応できる品種の導入など、安定供給に向けた工夫が産地に求められている。