ジャンボタニシが好むのは、植えたばかりの柔らかい稚苗。一方、害を受けにくいとされる大きく丈夫なポット苗は、専用の田植え機が必要で、導入が進んでいない。
そこで県は、通常の田植え機でも植え付けできる「中苗」に着目。播種(はしゅ)から20日ほどたった「稚苗」よりも2週間ほど長く育てた分、茎が太く、葉もしっかりしている。
育苗中に苗が密集して徒長しないよう、苗箱1枚当たりの播種量は乾もみ100グラムと通常よりも減らした。移植時には、1株当たり3~5本を植え付けるよう、田植え機で一度に切り取る苗箱の面積を調整。10アールに苗箱20~23枚を使用した。

ジャンボタニシが多い水田で稚苗を使った場合、除草を3回して欠株率は約13%。中苗なら、除草なしで5%前後に抑えられた。田植え初期の被害を乗り切ったことに加えて、生育が早いため、稲の葉が広がって光を遮り、自然と雑草も生えにくくなった。
有機栽培では、生育初期の食害を抑えるために浅水管理も重要になる。こうした水管理やジャンボタニシ用トラップとの併用で、さらに安定した栽培が期待できるという。
松前町で、化学農薬・肥料を使わない米作りに取り組む農業法人あぐりは、中苗を使った実証試験に参加した。代表の大森孝宗さん(63)は「苗を太らせるほどジャンボタニシにかまれにくくなる。追加の作業負担もなく、有機の現場に合っている実感がある」と話す。
県は、実証の結果を踏まえた有機水稲のジャンボタニシ対策のマニュアルを作り、近いうちに県のホームページに公開する予定だ。
捕獲状況 一目で確認

ジャンボタニシの捕獲トラップにはさまざまな種類があるが、大半は中身がよく見えず、一度引き上げて捕獲状況を確認する必要がある。
そこで愛媛県が製作したのは、上部が開いていて、ひと目で捕獲状況を確認できるトラップ。底に穴を開けたトレーに、透明なクリアファイルを切り抜いて取り付ける。誘引剤には水切りネットで包んだドッグフードを使い、水に浮かないよう重しで押さえる。一度入ったジャンボタニシは外に出られず、ジャンボタニシが活発な時期には2時間で80匹以上捕獲できた。
新規就農者を中心に有機農業への関心は高い。県は「ジャンボタニシがネックだった場所でも、有機農業を始められるきっかけになればいい」(農林水産研究所)と話す。
(溝口恵子)
- 播種後35日ほどの苗を移植し食害を防ぐ
- 苗箱1枚当たりの播種量を減らす
- 除草、水管理、トラップと組み合わせて効果アップ