![サツマイモの出来を確認する永田部会長(左)と西指導員(熊本県大津町で)](/media/2023/09/29/l/20230929_0kvztbpd5bgcpz2hyr7c.jpg)
![地域発 未来へ](/media/2023/04/02/l/20230402_sch3orq1h18fjcjxpeqr.jpg)
サツマイモ基腐病は2018年に国内で初確認、20年には熊本県内でも確認されている。以降、JA菊池甘藷(かんしょ)部会は講習会を複数回開き、育苗床の土壌消毒から挿し苗の消毒まで、一連の対策を部会員全戸で取り組んできた。
しかし、同部会事務局であるJA営農部園芸課南営農センターの西淳史指導員は「管内は部会外の農家も多く、JA共販出荷者だけでは産地を守ることはできないと感じた」と振り返る。
そこでJAと部会は町役場へ出向き、町内全てのサツマイモ農家を対象とした組織の設立を進言。21年2月に「大津町甘藷基腐病対策協議会」が設立された。県や町、JA部会、各地区の農業代表者で構成し、会長には同町産業振興部長が就任。協議会は管理ポイントに合わせた対策会議や同行巡回などに取り組み、地域が同病防止に向けて一つになった。県北広域本部と連携して対策パンフレットを作成し、同町の全サツマイモ農家や関係機関に配付し、意識の統一を図っている。
同町を含む菊池地域ではこれまで数件の症例が見つかったが、いずれも早期発見で、同一圃場(ほじょう)での連続発生はなく、封じ込めに成功している。発生を確認した生産者は「講習会で学び、注意深く観察して早期に発見できた。はじめはひどく落ち込んだが、JA職員や県担当者が親身になって対応してくれたので気持ちが落ち着き、対策の一歩を踏み出せた」と感謝する。町は同病対策で独自の補助事業を組み、消毒薬剤の購入を補助する。
産地は高齢化や後継者不足の問題も抱える。同部会ではこうした課題に対し、通常出荷とは別に、選別や調製を簡略化した出荷に取り組み、数量と単価の値決め取引を始めるなど対策を進めている。出荷作業が困難となる定植期でも安定供給しやすく、相対販売率も増加した。
また、その年の収穫量や貯蔵量を基に土付きでの出荷も始め、作業の省力化による栽培面積の維持・拡大を進めている。
同部会の永田宏治部会長は「産地規模と販売価格の維持を図り、安定収入を確保したい。後継者がサツマイモ農家になりたいと思えるよう、将来への種まきをしたい」と力を込める。